デジタルツインとは:用語解説

デジタルツインとは

デジタルツインとは、リアル(物理)空間にある情報をIoTなどで収集し、取得したデータをもとにデジタル(仮想)空間でリアル空間を「再現」する技術です。現実世界を仮想空間にそっくりそのままコピーすることから、「デジタルの双子=デジタルツイン」と呼ばれています。

デジタルツインの仕組み

デジタルツインの基本的な仕組みは以下のとおりです。

  • リアル空間(工場や建物など)の設備・機器に設置したIoTセンサー等から、温度などの環境データや稼働状況をリアルタイムで収集し、データ基盤(クラウド上のサーバなど)に送信する。
  • 取得したデータをAIで分析し、仮想空間(コンピューター上)に現実とそっくりな環境を再現して、現実に手を加えることなくシミュレーションを行う。
  • シミュレーション結果(検証・予測など)を現実へフィードバックする。

デジタルツインが注目される背景には、この仕組みを支える技術の進化があります。IoT・5Gの普及、AR/VRによるリアルなビジュアル表現、AIの分析精度向上により、高精度の可視化・高度なシミュレーションが可能になりました。

イメージ図:デジタルツインの仕組み
図1 デジタルツインの仕組み

メタバース/シミュレーションとの比較

●メタバースとの違い

メタバースとデジタルツインは、どちらも仮想空間に構築されますが、活用目的が大きく異なります。メタバースは、アバターやVRなどを介して、コミュニケーションや文化的活動、経済活動を行うための仮想空間であり、リアル空間を忠実に再現することは問われません。一方、デジタルツインはシミュレーションのためにリアル空間をそのまま再現した仮想空間で、様々なシナリオで検証・予測を行うことができます。

●シミュレーションとの関係

デジタルツインはシミュレーション技術の一つですが、目的に応じて一般的なシミュレーションより高度なシミュレーションを短時間で行うことができます。
一般的にシミュレーションとは、想定したシナリオ(仮説)に沿って仮想の設計・運用等をテスト・評価する、いわば「模擬実験」です。実験には仮説立案から実施まで相応の人手と時間がかかるうえ、現実の状況との連動性は乏しいと言えます。
対して、デジタルツインのシミュレーション環境はリアル空間の状況とリアルタイムで連動し、双方向に情報をやりとりします。デジタルツインはこの「連動性」と「リアルタイム性」の高さにより、迅速な現状把握、高精度の検証・予測を可能にします。

デジタルツインとメタバース/シミュレーションの比較
表1 デジタルツインとメタバース/シミュレーションの比較

デジタルツイン導入のメリット

デジタルツインの導入が進んでいる「製造業」を例に、主な導入効果を紹介します。

●デジタルツイン活用で「ものづくり」を最適化

デジタルツインは、作業効率アップから、設計・製造の効率化、工場のスマート化まで、あらゆる変革を加速させます。

デジタルツインの導入効果(製造業の場合)
表2 デジタルツインの導入効果(製造業の場合)

デジタルツインの活用事例

製造業の現場に始まったデジタルツインの活用は、建設、物流、社会インフラ(交通・エネルギー・防災・都市計画等)といった領域へ波及して活用シーンが広がり、単なる技術トレンドにとどまらない進展を見せています。

●製造業での活用

前述のように、製造・工場オペレーションにおいて様々な効果を発揮しており、現場の変革は経営課題の解決に、さらには競争力向上に通じています。また自動車業界では、自動運転技術の開発などに適用し、技術革新を推進する動きも見られます。さらに、調達から生産・販売までのサプライチェーン全体を仮想空間に再現し、需給変動や供給遅延に強い生産・供給体制の構築に活用するケースも増えています。

●建設業での活用

建設業では、建物やインフラの3Dモデルで建設前にシミュレーションを行い、設計の改善や問題点の洗い出しを行っています。さらに、工事の進捗と3Dモデルを比較することで、工程管理の効率化や安全性向上、リードタイム短縮、コスト削減に寄与しています。

●物流業での活用

物流業では、サプライチェーンマネジメントとロジスティクスの最適化に貢献しています。具体的には、過剰・不足が生じない在庫管理による保管コストの削減、最適な輸配送ルートの検証、渋滞の予測、非常時の輸配送ルート再計画などに活用されています。

●社会インフラでの活用

社会インフラ領域では、複雑に絡み合う社会課題の解決に向け、地域政策のテスト環境として期待が高まっています。具体的な活用事例を紹介します。

  • 3D都市モデルによる「スマートシティ構想の可視化」

    国土交通省が主導する「PLATEAU(プラトー)」は、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトで、様々なプレイヤーが参画しています。デジタルツインで構築した3D都市モデルを活用し、都市のポテンシャルを最大化する都市計画や防災サービスの創出、ひいては持続可能なまちづくりを目指す取り組みです。
    本プロジェクトにおいて、東京都は建物や道路、地形などを詳細に再現した3Dモデルを公開しており、再開発や防災計画に活用しています。

  • 地域の“足”を整備する「総合交通シミュレーションシステム」

    全国の自治体では、交通弱者への対策や脱炭素への対応が喫緊の課題となっており、地域公共交通の高度化が求められています。
    富士通は、国土交通省が主導する地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」において、定時定路線型交通とデマンド型交通を組み合わせたシミュレーションが可能な「総合交通シミュレーションシステム」を受託開発し、地域公共交通計画の策定を支援しています。

富士通が取り組むデジタルツインとは

富士通は、2035年を見据えた経営ビジョンの一つとして「Intelligent Society」を掲げ、ビッグデータとAIを駆使して未来を予測し、社会課題を解決に導く施策の高度化を目指しています。デジタルツインは、最適な解決策を引き寄せる未来予測の機軸です。

●地球規模の環境課題に挑む「海洋デジタルツイン」

気候変動などの環境課題の解決に向け、海洋の活用が注目されています。富士通では、変化する海洋環境を仮想空間上に可視化し、多面的なシミュレーションにより改善施策立案から効果検証までを支援する「海洋デジタルツイン」の研究開発を進めています。
海洋デジタルツインは、ブルーカーボン(注1)施策、生物多様性保全、海洋設備点検など、幅広い活用が期待されており、2025年には「海藻・海草によるブルーカーボンの定量化」や、「海のゆりかご“藻場”の回復・保全」に寄与する技術の開発に成功しました。

注1 沿岸・海洋生態系が光合成によりCO2を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素

●人間社会の運営を最適化する「ソーシャルデジタルツイン™」

富士通は、行動経済学などの人文社会科学とコンピューティング、AIなどの最先端IT技術を融合したコンバージングテクノロジー(注2)により、シミュレーションの対象を機器や建物などの物理的なものから、人々の行動や社会現象にまで広げた「ソーシャルデジタルツイン」を開発しました。本技術は、実社会を写し取った仮想空間上で、ある施策を実施したときに人々がどう行動し、社会がどう変化するかをシミュレーションします。人々の行動は行動特性に基づいて予測し、起こり得るリスクも可視化します。施策そのものもデジタル化して組み合わせ、新たな施策として組み立て直したうえで試すことができます。こうして施策を実施する前に効果や社会への影響を評価することで、多様な社会課題に対する最適な施策の立案を支援します。
活用事例として紹介した「総合交通シミュレーションシステム」はソーシャルデジタルツイン適用の一例です。また、国や自治体における政策立案への活用も進んでいます。今後も、持続可能な社会の実現に向け、社会インフラ領域における施策の高度化と社会実装を支援する考えです。

注2 特定の目的を達成するために複数の異なる分野の科学や技術を融合した技術

よくある質問

Q1. デジタルツインの強みは何ですか?

A1. デジタルツインの強みは、現実世界とリアルタイムで連動し、現実では実行が難しいシミュレーションを可能にする点です。また、解決策の効果や社会への波及効果を事前にシミュレーションできるため、最適な解決策の選択を可能にします。以下に例を示します。

●現実では時間のかかるシミュレーションを短時間で繰り返し行う
●実社会では実行できない大規模なシミュレーション
●危険が伴う作業のシミュレーション

Q2. デジタルツイン導入の課題はありますか?

A2. デジタルツインの導入にあたっては、データ基盤の整備、システム連携、人材確保など、いくつかの課題への対応が必要です。主な課題は以下のとおりです。

●データの量と質:高精度のAI分析には膨大な量の高品質なデータが必要
●データの標準化と連携:収集したデータの形式・規格の統一と連携が必要
●導入コスト:IoT機器、データ&AI活用、通信インフラの整備などへの投資が必要
●人材の育成・確保:テクノロジー活用に対応できる人材が必要

Q3. デジタルツインとIoTはどのような関係ですか?

A3. デジタルツインとIoTは「現実世界のデータを収集する手段(IoT)」と「そのデータを仮想環境で再現・分析する技術(デジタルツイン)」という関係にあります。
工場やビルの設備、車両など、現実の物理空間に設置されたIoTセンサーで稼働状況や温度、振動などのデータを収集。デジタルツインは収集された膨大なデータを基に、仮想環境に現実世界を再現し、分析・シミュレーションにより現状把握や未来予測を行う技術です。

Q4. デジタルツインはどのような企業が導入していますか?

A4. デジタルツインは、製造業をはじめ、建設業・物流業・公共分野など幅広い業種・企業で導入が進んでいます。製造業では開発・生産などの現場からサプライチェーンマネジメントまで活用シーンが広がっており、公共分野では交通・エネルギー・防災・都市計画といった社会インフラや環境の整備に用いられています。富士通は業種を問わず、お客様の課題に寄り添ったアプローチで、デジタルツイン活用を支援しています。

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