PRESS RELEASE
大規模な量子コンピュータの実現に向け、光接続で拡張を期待できるダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプを開発
2026年9月8日
富士通株式会社
当社は、このたび、ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプ(以下、本プロトタイプ)を開発しました。ダイヤモンドスピン方式は、高いフィデリティ(注1)と高効率の光接続により、将来的に量子コンピュータの大規模化への寄与が期待される方式です。従来比約10倍相当の高輝度なダイヤモンド結晶中のスズ-空孔(SnV)センター(以下、SnVセンター)(注2)と呼ばれる構造を量子ビットとして用いる世界初の構成(注3)を特長とし、超伝導方式の量子コンピュータの動作温度(典型的には約-273.13℃)より高い約-271.6℃で動作できることを確認しました。また、ユーザーが量子コンピュータの方式の違いを意識することなく、当社のハイブリッド量子コンピューティングプラットフォーム「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」経由で本プロトタイプを利用できることを実証しました。
今回の成果は、当社とDelft University of Technology(以下、デルフト工科大学)(注4)、およびその傘下の世界有数の量子技術研究機関であるQuTech(注5)が2020年より進めてきた共同研究成果を基に実現したものであり、量子コンピュータを大規模化するための有力なアプローチの一つであるモジュール型アーキテクチャの実現に向けた重要なマイルストーンです。
当社は、このたび開発した高輝度のSnVセンターを集積する技術をさらに発展させ、2027年を目標に複数量子モジュール(注6)から成るダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプの開発に取り組むとともに、超伝導方式との接続技術の開発にも取り組み、両方式を合わせて大規模な誤り耐性量子コンピュータの実現に向けた研究を推進していきます。
背景
量子コンピュータの実用化に向けては、超伝導、イオントラップ、中性原子などの様々な量子コンピュータの方式が世界で研究されています。ダイヤモンドスピン方式は、ダイヤモンド結晶中のカラーセンターと呼ばれる格子欠陥構造を量子ビットとして利用する方式です。量子状態を安定的に保ちやすいダイヤモンドの特性に起因する高いフィデリティが特長(注7)で、超伝導方式などに比べてより少数の物理量子ビットから論理量子ビットを構成できる可能性があります。また、光を用いることで量子モジュールを高い自由度で接続できる(注8)ことから、優れた拡張性をもつモジュール型アーキテクチャによるシステムの構築が可能になります。
これまでダイヤモンドスピン方式では、ダイヤモンド結晶中の窒素原子不純物によって形成された窒素-空孔(NV)センター(以下、NVセンター)と呼ばれる構造を用いるのが一般的でしたが、本プロトタイプの開発では、SnVセンターに着目しました。SnVセンターは高い対称性を持ち、NVセンターと比較して外部環境のノイズの影響を受けにくいのが特長で、非常に安定した高輝度のカラーセンターとして期待されています。
開発技術の概要
当社は、本プロトタイプ作製にあたり、以下の技術を開発しました。
- スケーラブルな量子コンピューティングチップを可能にする異種材料接合技術と薄層化技術
SnVセンターを用いた量子コンピューティングチップを実現するため、スズをイオン注入した高品質ダイヤモンド基板とアルミナ・酸化膜付きシリコン基板を接合する異種材料接合技術、および異種材料に接合した数百マイクロメートルの厚みを持つ硬いダイヤモンドを、量子コンピューティングチップに適した数百ナノメートルまで薄層化する技術を開発しました。
- SnVセンター向けフォトニクス集積回路作製技術
光による量子ビットの初期化や量子ビット状態の読み出しの際にSnVから放出される単一の光子を取り出すために、SnVセンターを含むナノメートルサイズのダイヤモンド結晶と、単一の光子を取り出すための可視光領域で透明なアルミナの光導波路を集積したフォトニクス集積回路(注9)を作製する技術を開発しました。ダイヤモンドの加工においては、国立大学法人東京大学(注10)との共同研究成果を活用しました。
- ダイヤモンドスピン方式向け量子回路変換・量子ビット制御技術
ダイヤモンドスピン方式では光・マイクロ波・RF波を組み合わせて量子ビットを制御するため、超伝導方式とは異なる制御方式が必要です。当社は、量子ゲートで記述された量子回路をダイヤモンドスピン方式向けの制御命令に変換する機構を開発し、「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」からの制御を実現しました。


(b) SnVセンターとNVセンターの分子構造と、発光スペクトル
富士通株式会社 執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当 ヴィヴェック マハジャンのコメント
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デルフト工科大学 QuTech ジェネラルディレクター Dr. Kees Eijkel(ケース エイケル)のコメント
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研究サポート
本研究の一部は、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(課題番号JPMXP1225NM0096)の支援を受けています。またQuTechと当社の共同研究は、オランダの官民連携助成制度による支援(注11)を受けています。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
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関連リンク
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本件に関するお問い合わせ
富士通株式会社
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