代表取締役社長
CEO
時田 隆仁
CEOからのメッセージ

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「Technology-drivenの価値創造」を追求することで、新事業の創出とコア事業の進化による持続的な成長を実現し、AIがもたらす産業構造の変化をリードしていきます。

2026年5月、富士通は「Technology-drivenの価値創造」をテーマとする中長期経営ビジョン2035(経営ビジョン2035)を発表しました。
AIをはじめとするテクノロジーの劇的な進化は、私たちの生活とそれを取り巻く社会を根底から変えようとしています。この変化の中で当社が果たすべき役割は何か、お客様にどのような価値を提供するのか、そしていかに「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを実現するのか、私たちは自らを問い直しました。経営ビジョン2035は、こうした問いに対する私たちの答えを集約したものです。
足元では、AIエージェントがソフトウェアサービスに破壊的変化をもたらす可能性が、急速に現実になりつつあります。また、ハイパースケーラーを含めた、技術力と巨大な市場シェアを持つ企業群との共存・共創を前提としない経営は現実的ではありません。このような当社を取り巻く厳然たる現実への認識もまた、経営ビジョン2035に反映しました。
今後10年間の社会構造の変動の中で、当社は産業構造の変革をリードするポジションを築けると確信しています。その姿を見据えながら、「Technology-drivenの価値創造」に邁進し、企業価値向上を目指します。

2023ー2025年度中期経営計画の成果

経営ビジョン2035の内容に先立ち、2023ー2025年度中期経営計画(前中計)の成果についてご報告します。
当社は前中計を、「2030年およびそれ以降に向けて、持続的な成長、収益力向上に向けたモデルを構築する3か年」と位置付けました。事業面では、3つの主な取り組み、すなわち事業モデルと事業ポートフォリオの変革、お客様のIT資産のモダナイゼーションの確実なサポート、海外ビジネスの収益性向上に注力しました。これらに取り組んだ結果、持続的な成長と収益力向上を可能にする事業モデルへの転換が前進したと、自信を持ってご報告できます。
これは、財務面の結果にも表れています。前中計のスタート直前の2022年度と、終了時の2025年度を比較すると、コア事業であるサービスソリューションの売上収益は18.3%増、調整後営業利益は121.9%増、調整後営業利益率は7.2ポイント増となりました。全社連結の業績についても、非コア事業の譲渡などにより売上収益は5.2%増収し、調整後営業利益は60.4%増と着実に収益力を向上させました。その結果、調整後ROEも2022年度の12.8%から15.8%へと伸長しました。
テクノロジー基盤については、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」を強化したほか、次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」や量子コンピュータの開発を進め、先端領域で高い技術力を持つ日本企業として存在感を示すことができました。当社が幅広い産業のリーディング企業と結んでいる協業・連携パートナーシップは、当社のテクノロジー基盤が評価されている証左にほかなりません。
このような前中計での成果に基づき、当社は2035年に向けた経営ビジョンの下で、テクノロジーをコアに成長のスピードと規模を拡大しようとしています。

2035年の社会における富士通の役割

今後10年間、社会はAI-drivenに変容していきます。企業経営の観点では、AIを活用して社会が求める価値を創出すること、社会課題を解決することが、最重要課題となるでしょう。
それでは2035年の社会で必要とされる価値、解決を求められる課題とは何か。当社は、人間の能力や可能性を拡張するHuman Augmentation、高性能でエネルギー効率の高いコンピュータを用い地球のあらゆる活動のシミュレーションを可能とするPlanetary Computing、データ主権と高度なセキュリティに基づき情報の安全を確保するSecurity Trustが重要なテーマになると想定しています。これらのテーマの実現に貢献するとともに、今後社会が直面する構造変化や課題に対して、当社だからこそ提供可能な「信頼できるテクノロジー」で解を導くこと。これが私たちの考える富士通の役割であり、パーパス実現に向けた手段です。
これら3つのテーマの実現への貢献は、地球環境の保全(Planet)、デジタル社会の発展(Prosperity)、人々のウェルビーイングの向上(People)というマテリアリティの必要不可欠な貢献分野への取り組みの先に見えてくるものです。こうした考えに基づき、当社は経営ビジョン2035の下、テクノロジーによる事業創出と、収益基盤であるサービスソリューションの事業拡大と進化という、テクノロジーを中核に据えた2つの戦略を推進することを打ち出しました。

AIを軸とした事業モデル転換の加速

前中計で進めた事業モデル変革をさらに加速し、成長軌道に乗せたサービスソリューションを拡大・進化する。それによってキャッシュ創出力を持続的に強化する。そこで得たキャッシュを投資し、テクノロジーによる事業創出を実現する。これが、経営ビジョン2035で当社が描く成長シナリオです。
事業モデル転換のドライバーとなるのはAIです。サービスソリューションの成長を牽引するUvance(ユーバンス)はもとより、モダナイゼーションを含めたすべてのサービスにAIを組み込みお客様への提供価値を高めます。同時に、当社自身があらゆる業務、すべてのサービス開発をAI-drivenで実行することで、事業モデル転換を加速します。特に後者については、自律的なAIエージェントを使ったサービスデリバリモデルへの進化によってコストを削減しながら圧倒的な生産性向上を実現し、今後10年間にわたって毎年2ポイント超売上総利益率(GM率)を改善する計画です。
並行して、お客様への課金モデルも転換します。2025年度時点でUvanceの売上収益の70%程度を占めた人月課金モデル、すなわち、エンジニアの延べ人数とサービス提供に要する時間をベースに対価を算出する仕組みを再構築し、お客様に提供する価値やお客様が当社サービスを得た結果として得る成果をベースとした課金モデルを拡大します。前中計では現場の自主性に委ねるところが大きかった課金モデルを再構築することで、より経営の意思を反映させていきます。

AIを前提に磨きあげる競争優位性

テクノロジーによる事業創出と、収益基盤であるサービスソリューションの事業拡大と進化の2つの戦略は、当社の競争優位性を鮮明にし、磨きあげ、それによって独自の価値創造を実現して成長に結び付けていくことを意図したものです。
当社の競争優位性の第1は、独自の先端テクノロジーです。特に、防衛やヘルスケアなどクリティカルな情報を扱う領域において求められるソブリンなテクノロジーを、プラットフォームからサービスまでトータルで提供できることは他社との大きな違いであり、富士通独自の価値創出の源泉です。
グローバル社会において日本が勝ち筋を描き具体化するためにも、ソブリンなテクノロジーの提供価値は大きいと確信しています。
第2の競争優位性は、テクノロジーを実装する「ラストワンマイル」を届けられることです。AIの進化に伴い、お客様自身によるテクノロジーの内製化が今後拡大することは確実です。とはいえ、常に進化し続けるテクノロジーを検証し、最適な組み合わせを選び、スピーディに実装するのは容易なことではありません。AIエージェントだけでは埋めきれない「実装のラストワンマイル」をつなぎ、お客様によるテクノロジーの価値享受を支えます。
第3の競争優位性は、あらゆる産業セクターにわたるお客様との取引を通じて蓄積した、業種や業務に関する深い知見です。この強みがあるからこそ「ラストワンマイル」での価値提供が可能であり、また特に、後述するUvanceをはじめとするアプリケーションレイヤーでの提供価値の高度化においても不可欠な要素です。一方で、人間・組織が持つ知見を貪欲に学習し続けるAIの進化スピードに鑑みれば、業種業務知見が今後も差別化要因であり続けるとは限りません。見方を変えれば、業種ドメイン知見を業種特化型AIエージェントに統合し、産業構造の革新やお客様の変革に貢献するサービスとして提供することが、競争優位性を維持するうえでのカギを握ると言えます。

テクノロジーによる事業創出

当社はテクノロジーによる事業創出を目指し、信頼性と省エネルギー性が高い計算基盤である〈Sovereign Platform〉、人とロボットが協調し自律的に進化する〈Physical AI〉、デジタルツインによる施策の高度化を可能にする〈Intelligent Society〉という3つの新領域をターゲットとして提示しました。2035年にはグローバルに約30兆円規模に達すると推計されるこれらの領域において、その10%に相当する3兆円の売上収益目標を掲げています。
テクノロジー領域では、〈Sovereign Platform〉に必須のソブリンなCPU(中央演算処理装置)やAIサーバ、〈Physical AI〉においてデジタルとフィジカルをつなぐOperating System(OS)、〈Intelligent Society〉の前提となるデータ基盤などの開発が進行中です。また、これらの技術が幅広く活用されるうえで不可欠な、企業・研究機関との戦略的パートナーシップ、いわゆる「エコシステム」も急速に拡大しています。
1960年代にメインフレーム開発に参入以来、当社は技術イノベーションの実績を築いてきました。「Technology-drivenの価値創造」という経営ビジョン2035のテーマの背景には、独自のCPU開発をはじめ、日本では当社だけが持つテクノロジーを事業モデルの中核に据えることで、「信頼できるテクノロジー」を軸に、市場において独自のポジションを確立するという狙いがあります。
率直に申し上げれば、現時点においては、新領域を収益化する事業モデルは模索中です。それでもあえて経営ビジョン2035においてテクノロジーによる事業創出、および売上収益3兆円という目標を掲げたのは、従来の延長線上にない挑戦を自らに迫らなければならないと考えたからです。テクノロジーの進化を踏まえれば、新事業は一夜にして旧事業となるかもしれません。100%、120%の力を発揮しなければ淘汰される。そうしたヒリヒリするような切迫感と新たな可能性開拓へのワクワク感を併せ持つ、あえて言えばスタートアップ企業のような熱量で新事業に取り組みます。

サービスソリューションの事業拡大と進化

サービスソリューションに関しては、2035年度にかけて年平均成長率(CAGR)6~8%の成長を計画しています。この拡大を牽引するのは、社会課題を起点とする当社の事業モデルであるUvanceです。前中計期間中にサービスソリューションの30%を占めるまでに成長したUvanceを2025年度から2030年度にCAGR20%以上で拡大し、サービスソリューションに占める割合を70%以上に引き上げることを目指します。そのカギを握るのがAIであることは、前述のとおりです。業種ドメイン知見に基づく業種特化型AIエージェントをサービスに統合することで、お客様への提供価値を高めます。
この事業戦略に合わせ、2025年度に日本国内で導入した組織マネジメントを拡大し、2026年4月からはグローバルな組織マネジメントをリージョン軸から業種軸へ改めました。業種軸への組織マネジメントの転換は、成長ポテンシャルを有する事業やリージョンにリソースを集中していくことを意味します。あえて強い言葉を用いれば、成長ができない事業やリージョンの淘汰を辞さないという経営の意思表明でもあります。
業種軸への転換を機に、防衛ビジネスへの注力も明示しています。当社は日本の防衛を支える企業の1社として、これまでも指揮統合システムや防衛情報インフラを提供してきました。近年の安全保障環境の変化を踏まえ、日本のみならず欧州などにおいても高まる「信頼できるテクノロジー」へのニーズを捉え、当社にしか担えない役割を果たします。
モダナイゼーションに関しても、2025年度から2030年度にCAGR10%以上の成長を掲げました。2029年にピークに達すると想定する当社のメインフレームおよびUNIXサーバを利用するお客様のモダナイゼーションに加え、他社製のIT資産のモダナイゼーション、AI前提のシステムへのモダナイゼーションへと事業ドメインを拡大します。

経営基盤の高度化

「Technology-drivenの価値創造」を実現しお客様への提供価値を高めるには、当社自身が「カスタマーゼロ」となり、自らAI-drivenな経営と意思決定、事業戦略立案と推進、業務プロセス変革を実践し、知見と洞察を更新し続けることが大前提となります。当社はAIを前提に組織・人・セキュリティ基盤を再設計し、経営基盤を高度化します。
中でもAI-drivenの実践を担うという点で重要なのは人材です。AIによる生産性の飛躍的な向上には、卓越したケイパビリティを持つ1人の人材がAIを使うことでイノベーションを実現したり、100人分の仕事をこなしたり、従来の100分の1の時間で成果を生んだりする可能性が開けることも含まれます。これからAIを前提にした人材の役割・スキルの再定義を進める中で、当社内で活躍の場を見出していく人材、社外での活躍機会を見出していく人材が出てくるのは必然でしょう。
2022年度末時点で12万4,000人強だった連結グループ従業員数は、2025年度末時点では9万9,000人あまりになりました。自律的に自らの価値を高めていける人材の獲得と維持強化を重視し、前中計において成果を生んできた事業ポートフォリオと連動した人材ポートフォリオ設計を実行した結果であり、今後もそれを継続する方針です。専門性ある人材の積極採用、自ら課題意識を持ってケイパビリティを高め続ける人材を適切に評価する仕組みづくりにも取り組み、人的資本を強化します。

実績で示していく経営ビジョン2035の実現可能性

経営ビジョン2035、成長シナリオ、その実現に向けた戦略を練る過程では、取締役会においても議論を重ねました。結果として、成長ストーリーを描くうえで抽象度を上げるべきところ、具体的に数字までブレイクダウンすべきところの強弱のありようが明確になったと考えています。
今回当社が、経営ビジョン2035において3年、5年単位での業績目標を掲げなかった理由の1つは、目標にとらわれず自らが持つ力を100%、120%発揮する、周囲の期待をはるかに上回る成果を上げる組織をつくり上げていきたいという私の意思、そしてそれは可能であるという確信を反映したものです。
当社の経営ビジョン2035に対してステークホルダーの皆様のご評価を得るには、成長と収益性改善を継続的に達成し、着実にキャッシュ創出力と資本効率性を高めるという実績が求められるということを、私たちは強く自覚しています。「Technology-drivenの価値創造」を実現しなければ10年後の富士通はないという覚悟を持って、新事業の創出、コア事業の拡大と進化、自らの変革に挑戦する私たちの姿と実績に、ぜひご注目ください。