エンタープライズ5Gモデルの選択基準は機能性、安全性、コスト・パフォーマンスのベストミックスIoT時代の5Gビジネス : 実証段階から実装へ

5Gはデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える重要なデジタル基盤技術の一つであり、これまでの通信ネットワーク技術の数倍のスピードで普及し始めています。産業界は、従来のエンタープライズ通信技術では困難であった超高速、低遅延、多数同時接続等といった優位性に注目しています。一方で、産業界における5Gネットワークの実装はまだ少数に留まっています。
本稿では、富士通グローバルマーケティング本部のチーフデジタルエコノミスト 金 堅敏 が、企業が5Gの導入を躊躇しているのはなぜか、企業の積極的な導入を阻害する要因は解消されるのか、世界で実装されているユースケースの成功要因について、調査・分析し、実装に向けたエンタープライズ5Gの選択モデルを提言します。
従来の4G・LTEに比べ急速に普及する5G
5Gには、4G/LTEがターゲットとしてきた消費者向け通信サービスに加えて、業種向けに展開されるエンタープライズ5Gといわれる企業向けサービスの強化が期待されています。5Gの「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」といった機能は、IoT時代に突入した企業に大きな価値を提供するポテンシャルを有しています。しかし、技術の有用性や実現性、データセキュリティの確保、不明瞭なコスト・パフォーマンスへの懸念から、企業の興味関心は高いものの、実際に導入へ踏み切ることを躊躇してしまうケースが多い状況です。
一方で、世界における次世代通信インフラとしての5Gネットワークへの投資は加速しており、キャリアの資本支出のうち、8割以上が5G関連に振り分けられると見込まれています。事実、初期段階の消費者向けのパブリック5Gは、4G・LTEと比較して4倍以上のスピードで普及し始めています。そして、企業向けに専用周波数が割り当てられるローカル5Gだけでなく、公衆向けの基地局やコアネットワークの一部をバーチャルに占有する形のエンタープライズ5Gも存在します。つまり、5G特有のスライシング技術やテレコエッジコンピューティングと組み合わせることで、コスト・パフォーマンスやセキュリティにおいてもバランスの取れた企業専有のネットワーク(パブリック5Gの専用化)が構築可能です。このような複数の適用パターンが提供されることで、企業側の多様なニーズを満たすことが可能となります。実際に、各国で実証・実装されているエンタープライズ5Gにおいても、ローカル5Gに加えて様々な形でパブリック5Gを専用化したユースケースが登場しています。
世界の主要キャリアや有力なITベンダー、通信機器メーカー、新興企業が、エンタープライズ5G分野への取り組みを加速しており、今後はユーザー企業側でも、実証から実装への移行が加速することが見込まれます。
テレコエッジコンピューティングとは:通信サイドから見たユーザに近いコンピューティング処理のこと。また、最近は「MEC」(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)とも呼ばれる。
5Gの優位性を認識しつつも導入に至らないギャップ
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図1 世界のIoTデバイス数の推移と予測

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図2 キャリアの設備投資における5G関連シェアの見込み (2021年 -2025年)
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これらの背景や動向を踏まえて、産業界は、デジタル革新の新時代の到来に備えて行動する必要があります。
パブリック5Gの普及拡大によるギャップの解消
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図3 企業別・事業別の個別ニーズを満たすネットワークスライシングのイメージ
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エンタープライズ5Gネットワークの選択モデルとユースケースの事例
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図4 企業専用5Gとパブリック5Gのネットワーク構成(概念図)
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1. SNPNモデル(ネットワークが物理的に独立するモデル)
図4に示すように、企業は5Gネットワークを構成するための基地局、コアネットワーク、伝送ネットワークのすべてを物理的に構築する必要があります。使用する周波数は以下のいずれかとなります。
- 自社取得保有の周波数
- 通信キャリアの周波数を独占的に利用する
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図5 富士通小山工場におけるローカル5Gの活用イメージ
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2. PNI-NPNモデル(パブリック5Gを物理的に共有するモデル)
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図6 企業専用ネットワークのPNI-NPNモデル(シェアードモデル)構築の概念図
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図7 ローカル5Gとパブリック5Gの融合を図るハイブリット5Gの構築イメージ
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図8 ハイアールの産業パークにおける5Gスライシング専用ネットワークの活用イメージ
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エンタープライズ5Gの選択基準 : 機能性、安全性、コストの最適ミックス
これまでの考察や事例から導き出されるユーザーサイドの5Gネットワークに対する要件は、大きく以下の3点にまとめられます。
- 5G機能に対する各ユースケースの異なるニーズを満たすこと(多様性・柔軟性)
- データセキュリティを満たせること(安全性)
- 自己定義/自主設計/自主管理の可能性(ネットワークのアジリティ)
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表1. 各種エンタープライズ専用5Gネットワークの特徴










