ナラティブの力:行動変容を促す「語り」の戦略[富士通研究所×大治朋子氏]

2024年7月23日
ナラティブ(物語、語り)に出会ったことで、人々の行動を変化させる技術研究、ツール開発の突破口を見出した富士通のコンバージングテクノロジー研究所。本記事では、『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』の著者で、毎日新聞の編集委員である大治 朋子 氏(写真中央)をお招きしたご講演、および富士通研究所 フェロー 増本 大器(写真左)、コンバージングテクノロジー基礎プロジェクトのプロジェクトディレクター 紺野 剛史(写真右)を交えたパネルディスカッションの様子をレポートします。
なぜ今、ナラティブが必要なのか
AIをはじめとするテクノロジーの恩恵を受け、社会が豊かになる一方、SNSを利用した犯罪の増加、深刻な教育格差問題など、その歪みが社会課題として露呈しています。こうした社会で一人ひとりがウェルビーイングを向上させるには、進化し続けるテクノロジーをどう取り入れていけばよいのでしょうか。
富士通のコンバージングテクノロジー研究所では、テーマの一つである特殊詐欺防止訓練AIツールの開発当初、体験者である高齢者の方々からの納得感や共感を得られず、防犯意識の向上が難しいという課題を抱えていました。人々の意識を変えるために何ができるか検討する中で、人を動かす方法としてナラティブが活用されていることを知り、同時にナラティブに関する著書を多く出版されている大治朋子氏に出会いました。
ナラティブ×AIを実証するコンバージングテクノロジー研究

富士通は、複雑で多様化する社会課題を解決するためには、デジタル技術と人文・社会科学を融合させることが重要であると考え、5つの重点技術領域の一つとしてコンバージングテクノロジーを研究しています。
「特殊詐欺などの研究を始めた当初は、AIだけ使っていても複雑な犯罪に太刀打ちできないのではと危機感を持っていました。結局は人が変わらないと社会は変わらない。人の心理や行動に関する普遍的な人文・社会科学の知見を、AIを含むデジタル技術と融合することによって、より社会課題の解決に貢献できるのではないかと考えています」。
続けて紺野は、直近開発した「特殊詐欺防止訓練AIツール(注1)」や「カスタマーハラスメント体験AIツール(注2)」を例に、ナラティブ×AIの研究成果を紹介しました。
「我々の開発したAIツールは、犯罪心理学とITの掛け合わせによる独自技術で、詐欺やカスタマーハラスメントの疑似体験を可能にし、トラブルを未然に抑える訓練ができます。訓練後には、個人の特性に合わせたフィードバックをすることで納得感を促します。それにより、特殊詐欺に対する当事者意識を持たせたり、より適切なカスタマーハラスメント応対方法が身につくことを目指しています」。
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人を動かすナラティブ ~そのメカニズムと世界の事例~
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- (注3)脳神経科学や認知心理学の立場から研究する「ナラティブ・ネットワークス(N2)」、認知戦に備えての「戦略的コミュニケーションにおけるソーシャルメディア(SMISC)」











