日本発小売業の未来に欠かせない
グローバルで培われたAIソリューションとは?
ー富士通×独 GK Softwareが促す日本の小売業界のDX化

GK Softwareのマイケル・シャイブナーCEO(最高経営責任者)と、富士通Consumer Experience事業本部の松本良浩エグゼクティブディレクター

Article|2025年4月4日

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欧米の小売業界の大手企業に「デジタル化の標準プラットフォーム」を提供してきた独GK Softwareが、富士通グループの一員として日本市場に本格参入する。多様化が著しい決済システムや販売商品の管理・分析だけでなく、AI(人工知能)を活用するダイナミックプライシングなどの新機能を、全国にチェーン店網を持つ大手スーパーや製造小売業(SPA)、コンビニエンスストアなどに提供する。特有の商慣習や世界トップレベルのホスピタリティが外資の参入障壁といわれている日本で、どのような勝機を見据えているのか。GK Softwareのマイケル・シャイブナーCEO(最高経営責任者)と、富士通Consumer Experience事業本部の松本良浩エグゼクティブディレクターに聞いた。

小売業界の世界トップ50社で高いシェアを誇る

――GK Softwareは小売業の世界トップ50社が導入しているコマースプラットフォームで24%超のシェアを占め、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進で世界トップ級の地位にあります。これまで、どのような成長の軌跡をたどってきたのでしょうか。

シャイブナー氏

GK Softwareは1990年の創業から、グローバルに店舗を展開する大手小売業に、ハードウエアの種類・形式に依存しないコマースソリューションを提供することに集中してきました。国・地域によってメジャーな決済手段は違いますし、情報プラットフォームやITの発展度合いも様々です。そこで販売の現場で多様な価値をできる限り素早く取り込めるようにし、「お客様が成長できること」に力を入れてきました。

大きく成長するきっかけとなったのは、世界31カ国で約1万2000店を展開するドイツのディスカウントストア「リドル(Lidl)」の決済・販売システム(POSシステム)を手掛けたことでした。その野心的なプロジェクトに取り組んだことで、グローバル規模で小売業向けソリューションを提供できるソフトウエア企業になったのです。2008年に独フランクフルト証券取引所に上場して以後は、「グローバルで小売業にDXソリューションを提供する」ことが成長シナリオになりました。

マイケル・シャイブナー氏
GK Software CEO
Michael Scheibner
マイケル・シャイブナー氏

――日本の小売業界も「DX化を急げ」の流れはますます強まっています。小売業界の企業への成長支援ノウハウを持つGK Softwareとして日本の小売業界の現状をどのように見ていますか。

類似するドイツでのノウハウを生かして日本市場に進出

シャイブナー氏

欧州と日本には多くの類似点があります。特にドイツは、人口は日本よりやや少ないのですが、高齢化も進んでいるなど日本と似たような状況にあります。日本はキャッシュ(現金)決済が今も多いと言われますが、ドイツも同じようにキャッシュが主流の社会です。ただし、日本でも欧州でもキャッシュレス化の進展は速く、様々なキャッシュレス決済が混在しているのが現状です。

私たちGK Softwareは、常に顧客の視点から、より柔軟で、より速やかに決済できる手段を、どのような小売店にも導入できるプラットフォームを持っています。実際に昨年(2023年)から、富士通のリテール(Uvance CX)チームと日本の様々な小売店を訪問し観察してきました。グラフィックやカラーコーディングなど、お客様視点での使いやすい仕組みは、GK Softwareが欧米で行ってきたことと変わりません。コマースプラットフォームについては文化や商習慣がハードルになることは無いと判断しました。

――これまでに日本市場で事業を展開していた経験はあるのでしょうか。

シャイブナー氏

その答えはイエスです。日本市場に進出した米国の大手総合スーパーや、世界的トップブランドを保有するスイス企業などが持つ日本国内の店舗で、GK Softwareのプラットフォームを使っていただいています。

富士通×GK Softwareがもたらすインパクト

――その中で今回、富士通との資本・業務提携によって本格的に日本市場に参入しようとしています。なぜ他の企業ではない、富士通とパートナーシップを結ぼうと決断したのでしょうか。

シャイブナー氏

むしろ「富士通しかない」と考えるのが正解でしょう。富士通は日本国内で小売業界向けソリューションではトップクラスです。さらに「量子コンピューター」のような次世代技術の研究開発で世界の最前線を走っています。AIの活用によって高速処理が不可欠となる、将来のグローバル小売業向けのプラットフォームを動かすのに欠かせません。

松本

お互いが企業として確実に成長していくための地域的な組み合わせも最良でした。GK Softwareはアジア地域でのビジネス展開はこれからですが、富士通はアジア全域をカバーしてきました。富士通が今後、欧米リテールマーケットで大きく成長していくには、多額の投資と多大なる人的リソースが必要になります。そこで、既に欧米大手小売業で大きなシェアを持つGK Softwareの顧客基盤とプラットフォームを活用できれば、提携やインオーガニック成長※が実現可能と考えました。
※インオーガニック成長:提携や買収、または資金調達による非連続的な成長を指す

松本良浩
富士通株式会社
Consumer Experience事業本部
エグゼクティブディレクター
松本良浩

――富士通とGK Softwareのタッグチームは、日本市場にどのようなインパクトをもたらすのでしょうか。

シャイブナー氏

両社は実のところ、機能面で補完関係にもあるのです。GK SoftwareはAIを活用して多数の店舗にある商品在庫を減らしながら利益を最大化する値決めを可能にする「ダイナミックプライシング」や、お客様の消費行動などからニーズを見極めて商品や買い時をオススメする「パーソナライゼーション」などの新しい価値を提供できます。一方で富士通は、実店舗でもオンラインでも買い物時の不正手段を防止する「VISION AI」などの高度なセキュリティー技術に定評があります。両社の組み合わせは、顧客から非常に高い信頼を得ながら、これまでにない価値を生み出せると確信しています。

松本

GK SoftwareのUnified Commerce Platformは、小売業の様々な業態変化やグローバル事業展開に対応できる拡張性と柔軟性を備えた、最新の優れたプラットフォームです。これは、マイケル(シャイブナー氏)のコメント通り、世界中に店舗展開を行う欧米大手小売企業で数多く稼働しているという実績に裏付けされています。この標準化されたプロダクトとプラットフォームのグローバルなスケールメリットを日本のお客様にも享受いただくために、コア部分の日本市場へのフィッティングをGKと富士通が協力して進めています。

次に、GKと富士通はソリューションポートフォリオで補完関係にあります。富士通は店舗ソリューションのみならずeコマースソリューションや、商品供給を担う物流・倉庫、サプライヤとのサプライチェーンのソリューション、また小売業の本部オペレーションを担うMDソリューションを提供してきました。日本の小売業のお客様向けにも、店舗領域についてはGKのプラットフォームをコアとして提供し、補完ソリューションを富士通が提供することで、お客様の事業活動全体とその高度化を支えていきます。

さらに、GK SoftwareのAIを活用したダイナミックプライシングやパーソナライゼーションなどの日本では目新しい斬新なソリューションを日本市場に展開し、富士通の需要予測や、消費者エンゲージメントのソリューションと連携して活用いただくことにより、お客様のトップライン拡大への貢献や、サプライチェーンの高度化と、ロス削減、サステナビリティーの実現など、より高度な付加価値が提供できるようになると考えています。

マイケル・シャイブナー氏と松本良浩

リテールシステムを「Fit to Standard」へ

――今後、日本市場ではどのような小売企業をターゲットとしていきますか。

シャイブナー氏

私たちが持つ小売業向けの製品ポートフォリオは日本でも魅力的だと確信しており、さらに利用しやすいとの評価を得られるよう力を尽くしていく決意です。よく「日本は商習慣が世界とは違う」というご意見もうかがうのですが、私たちはローカル市場向けに個別のソリューションを開発するのではなく、標準的なソリューションを持っていて、地域ごとに言語、通貨、財政的な要件といった現地で求められる機能を、「カントリー・パック」として同梱し、利用できるようにします。ソリューションの中核は常に同じで、それぞれの国・地域で特有のものを実装するための適切なインターフェースを備えています。つまり小売企業システムでの「Fit to Standard」を可能にする仕組みです。

食品スーパーや世界に店舗を広げている大手SPA、また日本が世界に誇るコンビニなど、成熟したシステムを持つ大手企業が将来を考える時にこそ、私たちの出番があると考えています。

どこの国でも小売業は今後、「リピーター」を確保することが不可欠です。欧米だけでなく日本でも、多くの大手小売企業は運用コストが高く、適応に多大な労力を要する古いソリューションを使い、開発・サポートの終了にも直面して頭を抱えてしまう。その解決には容認できないほど長い時間がかかり、新しい顧客対応や顧客維持のための魅力的なソリューションを導入できずにいます。

富士通とGK Softwareは、こうした難題をクリアできる適切なソリューションにより、効果的なサポートを日本でも提供できると自信を深めているところです。

顧客・生活者体験の向上Days オンラインセミナー動画

GK Softwareのマイケル・シャイブナーCEOと富士通の松本が、ウエルシア薬局様のダイナミックプライシング検証結果について、オンラインセミナー『顧客・生活者体験の向上Days』にて対談しました。

衣料品店でスマートフォンを操作する女性
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