CSR担当者Meetup 第3回 開催レポート
~企業の社会的価値を高める寄付活動~

富士通株式会社とPwC Japanグループは、CSR・サステナビリティ担当者が集う「CSR担当者 Meetup」を、開催しました。 今回で第3回を迎える本イベントは、「企業の社会的価値を高める寄付活動」をテーマに、企業のCSR担当者等、48社79名が集まりました。

サステナビリティ経営が企業にとって不可欠となる中で、「寄付活動をどう位置づけるか」、「ビジネスとの両立はどう考えるべきか」といった課題は、CSR担当者が共通して抱くテーマです。本Meetupは、こうした問いに対し、担当者同士が本音で意見を交換し、実践から生まれた知見を共有しながら、より大きな社会的インパクトを生み出すヒントを探る場として企画されています。

開催概要

日時

2025年11月21日(金)15:00~18:00

会場

Ridgelinez(東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内パークビルディング)

主催

富士通株式会社、PwC Japanグループ

プログラム
  • オープニングトーク
    「サステナビリティ経営時代の寄付活動とインパクト ―寄付から共創へ―」
    認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会
    代表理事 鵜尾 雅隆 氏
  • 共有セッション(企業による事例紹介)
  • 分科会(グループディスカッション)

オープニングトーク

冒頭のオープニングでは、日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾 雅隆氏が登壇し、「サステナビリティ経営時代の寄付活動とインパクト ―寄付から共創へ―」をテーマに、寄付の現状と企業の役割、そして今求められる社会的インパクト創出について講演いただきました。

認定NPO法人 日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆 氏
認定NPO法人 日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆 氏

「課題先進国」日本で求められる、新たな社会のつくり方

鵜尾氏は日本社会を「世界に先駆けて複雑な課題が表面化する“課題先進国”」と表現しました。
少子高齢化、地域の衰退、財政難、貧困、教育格差──こうした課題が重層的に進む中で、行政だけに依存するモデルは限界を迎えています。
 
こうした背景から、
 ・多様な主体(行政・企業・市民・NPO)が連携する「共助型社会」
 ・企業が社会課題解決の主役の一つとなる「インパクトエコノミー」
が重要になってきていると指摘しました。

寄付とボランティアがつくる「共感の連鎖」

鵜尾氏が強調したのは、日本社会の特徴ともいえる“実体験の力”です。
かつては経済と技術の発展だけで企業が成長できる時代でしたが、現在は社会自体が大きな変数となり、不安定化しており、社会の安定を前提にした経営が通用しなくなり、企業は社会課題や人々の意識変化を経営に取り込む必要があると解説くださいました。
そのため、企業の社会貢献活動やNPOとの連携が、単なるCSRではなく、事業成長や社会的インパクト創出のための重要な要素となっており、またNPOは政策実現や意識変革に強みがあり、企業がNPOと協働することで、より広範な社会変革が可能になると語られています。
 
日本では、情報よりも「実際にやってみる」経験が、人の意識を大きく変えます。寄付やボランティアもその一つであり、
 ・行動すること
 ・体験を共有すること
 ・仲間と語り合うこと
これらが”共感の連鎖”を生み、社会全体の価値観が変わっていくと説明しました。
実際、東日本大震災以降、多くの企業が寄付や社会貢献の文化を再構築し始めています。

寄付のトレンドは「成果」「透明性」「共創」へ

講演の中では、企業寄付をめぐる新たな潮流も紹介されました。
 ・グッドガバナンス認証の普及
 ・ふるさと納税など選択型寄付の浸透
 ・社会的インパクトの可視化
 ・成果志向型寄付の増加
 ・インパクト投資との接続
これらの動きにより、寄付は“善意の行為”から“戦略的投資”へと性格を変えつつあります。
さらに、広島県の動物殺処分ゼロや、島根県の子ども主体プロジェクトなど、寄付が行政や地域コミュニティを動かした事例を紹介。寄付が社会構造を変える力を持つことを、リアルなデータとともに示しました。

企業に向けたメッセージ:「寄付から共創へ」

最後に鵜尾氏は、企業が寄付活動を通じて果たせる役割について次のように語りました。

寄付は、企業が社会と“共創”するための入り口です。
社員、顧客、地域、NPO──多様な主体がつながることで、インパクトは何倍にも広がります。

CSR担当者に向けて、「寄付教育」や「体験型プログラム」を取り入れながら、次世代に“社会を変える力”を引き継ぐ仕組みづくりが大切であるとエールを送り、セッションを締めくくりました。

分科会(グループディスカッション)

最後に、参加者同士のグループディスカッションを実施しました。
災害支援寄付、社員参加型の寄付制度、協賛・スポンサー施策、NPOとの協働、成果評価など、事前アンケートで多く挙がったテーマをもとに活発な議論が行われました。参加者同士が寄付先選定の基準設定やマッチングギフトの工夫、インパクト評価の方法など具体事例を共有し合い、自社で活かせるヒントを持ち帰る有意義な時間となりました。

分科会の様子

今回のCSR担当者 Meetupでは、寄付活動をめぐる最新の知見や、企業現場での実践、そして参加者同士の率直な対話を通じて、企業が社会とどう向き合い、どのようにインパクトを生み出していくのかを、多角的に考えることができました。各社が今後の取り組みを一段引き上げるための確かな土台が形づくられました。
社会課題が複雑化する今、企業の社会的価値のあり方は大きく変化しています。富士通とPwCは、これからも業界の知見形成と実践を牽引し、企業がより大きなインパクトを生み出せるよう支援と伴走を続けてまいります。ここでの学びとつながりが、皆さまの次のアクションを力強く後押しすると確信しています。本日の出会いと対話が、明日からの一歩につながり、企業と社会の未来を共につくる力になることを願っています。

参加者の集合写真