安心安全で信頼できるAI社会のために 富士通のAI倫理ガバナンス
AIの社会実装が刻々と進展するに伴って、AIの安心安全な利活用のために
AI倫理の観点を踏まえて組織が自己規律を行うこと、すなわち「AI倫理ガバナンス」が強く求められる時代になっています。
富士通グループは、国内でも早い段階から「AI倫理ガバナンス」に取り組み、さまざまな活動を推進しています。
ここでは、代表的な活動内容についてご紹介します。
富士通グループAIコミットメント
富士通グループが守るべき項目をお客様や社会に約束
富士通グループは、かねてから「Human Centric」、すなわち情報技術が人間中心に利用されるべきであることを訴えてきました。2019年3月には、近年のAI技術の急速な発展を踏まえて「富士通グループAIコミットメント」を策定、公表しました。これは、富士通グループのパーパスをAIの観点から具体化し、私たちが守るべき項目をお客様や社会に対する約束としてまとめたものです。AIの研究・開発・提供・運用などのビジネスに携わる企業として、生活者を含めた幅広い社会のステークホルダーとの対話を重視しながら、AIがもたらす豊かな価値を広く社会に普及させていくことを目指しています。
「富士通グループAIコミットメント」5項目
- AIによってお客様と社会に価値を提供します
- 人を中心に考えたAIを目指します
- AIで持続可能な社会を目指します
- 人の意思決定を尊重し支援するAIを目指します
- 企業の社会的責任としてのAIの透明性と説明責任を重視します
「富士通グループAIコミットメント」作成の背景
2018年に、富士通グループである「欧州富士通研究所」がAI4Peopleへ創立メンバーとして加盟しました。AI4peopleとは、生命に関する倫理的問題を扱う研究分野である「生命倫理学」を基盤とする、欧州有識者会議です。
「富士通グループAIコミットメント」5原則策定にあたり、各原則が必要とされる根拠(客観性)と、考慮されるべき内容全体がカバーされること(網羅性)を担保するため、AI4peopleと連携し、学術的見解を踏まえた上で作成しました。
富士通グループAI倫理外部委員会
AI倫理外部委員会メンバー
辻井 潤一(つじい じゅんいち)委員長
国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間工学領域フェロー、東京大学名誉教授、マンチェスター大学教授、他
君嶋 祐子(きみじま ゆうこ)先生
慶應義塾大学 法学部・大学院法学研究科教授、 同大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)所長、弁護士、他
国谷 裕子(くにや ひろこ)先生
ジャーナリスト、東京藝術大学理事(SDGs推進室長)、他
武部 貴則(たけべ たかのり)先生
東京科学大学 統合研究機構教授、横浜市市立大学 コミュニケーション・デザイン・センターセンター長、シンシナティ小児病院 オルガノイドセンター副センター長、大阪大学大学院教授、一般社団法人ステラ・サイエンス・ファウンデーション代表理事、他
板東 久美子(ばんどう くみこ)先生
日本赤十字社常任理事、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン理事、他
湯本 貴和(ゆもと たかかず)先生
京都大学名誉教授、中部大学客員教授、日本フードスタディーズカレッジ学長、きょうと生物多様性センターセンター長、他
コーポレートガバナンスの一環としての委員会活動
富士通グループでは、AIのみならず、法学、生命医学、動物学、SDGs、消費者行政など多様性に配慮した様々な分野の専門家から構成される「富士通グループAI倫理外部委員会」を設置しています。
この委員会では国内外の社会情勢を踏まえ、おおむね半年に1回、AI倫理に関するさまざまな議題について、社長・副社長含めての議論を行い、その成果を取締役会に共有しています。
委員会による提言をまとめたホワイトペーパーの公開
富士通グループでは、本委員会の詳しい活動内容と、議論で得られた「委員会からの提言」の一部および提言をもとにした「富士通の実践例」について、AI利用企業の皆さま向けに、ホワイトペーパーとして広く公開しています。本ホワイトペーパーを、AI倫理ガバナンスにご興味のある皆さまにご活用いただくことで、安心安全なAI社会の実現に一層貢献できれば幸いです。
「富士通グループAI倫理外部委員会」による提言および富士通の実践例
ガバナンス体制
富士通グループ全従業員を巻き込んだAI倫理実践
AI倫理ガバナンス室の設立
2022年2月に新設された「AI倫理ガバナンス室」が、「富士通グループAIコミットメント」を踏まえ富士通グループのAI倫理について、ガバナンス戦略確立・社内実践・社外浸透などを主導しています。
プロセスへの組み込み
富士通グループでは、AIの開発から運用までの倫理実践プロセスを確立するため、さまざまな施策に取り組んでいます。
- 全件審査:すべてのAIビジネスについて、倫理リスク審査を行う「全件審査」が義務づけられています。「リスクあり」とみなされたシステムについては、複数の専門部門にて技術・事業・人権・法律などの観点から多角的に検討することで、AI倫理に関する問題発生を未然に防止する努力を重ねています。十分に検討したうえでも深刻なリスクを除去できないビジネスについては、「推進不可」として差し戻しを行うなど、綿密な審査を実施しています。
- 全社教育:ビジネス部門やコーポレート部門を含む富士通グループ全従業員に対して、eラーニングを活用したAI倫理教育を毎年実施するなど、人材育成に力をいれています。他にも、用途やシステムごとに倫理リスクをまとめたガイドラインや従業員向けセミナー、ユーザー企業向け資料などを多数提供し、AI倫理の社内浸透の深度化を図っています。
- 通報窓口:*通報窓口「Fujitsu Alert」を設置し、倫理やコンプライアンスに関して、従業員にとどまらずお客様や第三者などからも通報、相談が可能な体制を整えています。
- 各国規制への対応:富士通グループでは、2026年に完全適用が見込まれているEU AI法など、国内外の最新のAI規制動向を踏まえたAIガバナンスを推進しています。
- グローバル実践:AIを巡る社会的受容性やAIビジネススピードを勘案し、海外のリージョン毎に「AI倫理責任者」を配置しています。「AI倫理責任者」主導のもと、リージョン毎にAI倫理審査を行う運用とすることで、その地域固有の倫理的・文化的観点やビジネス特性なども考慮したAIリスク低減策の実施が可能になるのです。
社外のステークホルダーとの連携
安心・安全なAI社会の実現のためには、私たちだけで AI 倫理に取り組むのでなく、社会との協調も大切です。当社では、官公庁への提言、産学連携、他企業への講演など幅広いステークホルダーを巻き込んだコミュニティづくりを積極的に推進し、AI倫理に関する議論が産業界だけで完結しないよう意識しています。
政府・業界団体
富士通グループは、「信頼できる AI」を提供する企業として、政府関係者や業界団体などから認知されています。官公庁の AI 原則やガイドラインの検討会にも構成員として参画するなど、社会のためのオフィシャルな AI 倫理ガバナンスルール策定に積極的に関わっています。一例として、国際的な取組みであるGPAI(Global partnership on AI)への参画や、総務省・経済産業省の要請を受けての「AI事業者ガイドライン」策定への参画があげられます。
教育機関
富士通グループの産学連携の特徴として、文理の学問領域や、性別・年齢・国境などの垣根を超えた、様々なステークホルダーが関わっていることがあげられます。たとえば、技術分野の研究者だけでなく、法学・社会学といった社会科学分野の有識者も多数交えて研究を進めています。AI倫理は新しい研究分野であるため、多様なバックグラウンドを持つ人々と、多角的な観点から議論を成熟させることが不可欠となるのです。
ユーザーコミュニティ
富士通グループでは、AIを利用する企業の皆さまに対して、AI倫理に関する意見交換を積極的に提案するなど、AI倫理の共同実践に力を入れています。
AI 利用企業とAI提供者が協力しながらAI倫理の学びを深めてAIを利用することは、社会に生きる消費者・生活者を脅威から守るための効果的な施策です。
またRidgelinzにおける「生成AIコンサルティング」の拡販を通じて、私たちのAI倫理のノウハウを顧客に提供するといった取組みも行っています。