~Decision Intelligenceが「意思決定の常識」を変革する~ データドリブン経営の限界の先へ
Insight | 2025年10月30日
この記事は約15分で読めます
「私たちの打つ手は、本当に最善なのか?」
地政学リスク、イノベーションの加速、マーケットの激しい変動、多様化する顧客ニーズ。これらは不確実(Brittle)、不安(Anxious)、非線形(Nonlinear)、不可解(Incomprehensible)な「BANI」時代を形成し、ビジネス環境を今までになく複雑にしています。過去の成功の延長線上に意思決定を置けば、機会損失に直結するリスクを高めかねません。企業が持続的な成長を実現するには、素早く的確な判断はもちろん、組織全体の意思決定システムとプロセスの大きな変革が求められています。
この時代の企業を持続的成長に導くカギとして、にわかに注目されているのが、「ディシジョンインテリジェンス(Decision Intelligence:DI)」です。DIは単なるデータ分析ツールの導入やAI活用といった部分的な対策を意味しません。膨大なデータ、自律的に考え行動するAIエージェント、そして事業に深い洞察を持つ「人間の知性」を有機的に統合します。
それは、意思決定にまつわる経営企画や投資管理といった実務面のプロセスの抜本的な変革をもたらす、つまり、意思決定そのものの「常識を再定義」することを意味します。
経営や現場の様々な暗黙知を形式知化し学習し続けるAIエージェント。市場や現場の様々な情報から瞬時にデジタルツイン上で複数のシナリオを提示するAIエージェント。これらの複数の判断をもとに全体最適解を導くオーケストレーターエージェント。そして、各AIエージェントの協調を一つの枠組みとして、AIエージェント単体より高度な自律性と適応力を備えたエージェンティックAI。
これらはあくまで人間と協調する「相棒」です。組織のパーパスや人間の知性を組み合わせ、経済価値と社会価値を両立する経営者の知恵があくまで基軸となります。さらには圧倒的スピードでものごとを動かすために、これまでと異なる組織構造とプロセスの抜本的変革も必要となります。今のうちからこれらDIを加速する先進技術へのキャッチアップと様々な試行錯誤を進めることが、組織の潜在能力を最大限に引き出し、企業価値向上の角度を変える原動力となるでしょう。
本稿では、DIが既存のデータドリブン経営の限界を超え、企業にいかに新たな価値をもたらすかを具体的に紹介します。さらに、DIを効果的に確立するために企業が取り組むべき「4つの視点」を解説します。BANI時代を俊敏に乗りこなし、さらなる企業価値向上につながる指針の一助になれば幸いです。
藤井 剛
Takeshi Fujii
富士通株式会社
Strategy & Transformation 本部長
20年以上にわたる戦略コンサルタントのキャリアを経て2024年富士通入社。事業ポートフォリオ変革の中核であるUvanceの事業戦略責任者として戦略策定と実行をリード。前職のデロイトトーマツコンサルティングでは戦略コンサルティング部門Monitor DeloitteのジャパンリーダーおよびChief Value Officerを歴任。大学院大学 至善館 特任准教授。
鈴木 大祐
Daisuke Suzuki
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部
マーケティング戦略統括部 コーポーレートインサイト部
部長
日本経済新聞社、PwC Japanを経て2024年3月に富士通入社。日本経済新聞では記者、デスクとして約18年間、財務省、金融庁、経済産業省など中央省庁の政策取材のほか、エネルギーやスタートアップなどの業界を担当。PwC JapanではThought Leadershipの企画立案、編集、執筆をリード。
関連コンテンツ
データ&AIで変革する経営の意思決定:ビジネスインパクトとソーシャルインパクトの最大化
Fujitsu Data Intelligence PaaS
医療機関の経営効率化と安定的な医療サービスの提供に向け、ヘルスケアに特化したAIエージェントの実行基盤を構築
Data & AI駆動のサプライチェーンで不確実時代の「関税パズル」を解く