解説 Fujitsu Technology and Service Vision 2025 富士通が描く「人とAI」中心の未来ビジネスとは

Article | 2025年7月18日
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テクノロジーがこれからどのように進化し、私たちのビジネスや社会を発展させるのか。富士通はテクノロジー企業として、この問いへの答えを追求し続けています。進化するAIが産業革命のような変革をもたらすのではないかと期待される中、この度、富士通が考える未来のストーリーを Fujitsu Technology and Service Vision 2025 として発表しました。
本記事はストーリーのうち、人とAIとが共創して社会課題を解決する未来のビジネスについて、その一部をご紹介します。ぜひ本編をダウンロードし、皆様が思い描いているビジョンと重ねてご覧いただければと思います。
※所属・役職は取材当時のものです
AIは「まず使ってみる」から「見極め」の段階へ
富士通はFujitsu Technology and Service Vision 2025(以下、FT&SV 2025)の策定にあたり2025年2月、15か国800人の企業の経営者を対象にアンケート調査を実施しました。(*1)
自社への生成AIの導入状況について質問したところ、実に98パーセントの企業が「導入済み」であると回答しました。
一方でAIへの投資計画について訊ねたところ、「投資を強化する」と答えた企業が77パーセントを占めたのに対し、14パーセントが「投資を減らす」と回答しました。

AIが普及する中、従業員の働き方について訊ねたところ、「2030年までにすべての従業員がAIの支援を受けて業務を遂行するようになる」という回答は、79パーセントに上りました。
また、「AIの活用は自社の労働力不足を緩和する鍵になる」と回答した経営者は82パーセントに達していました。

調査結果について、「AI を使ってみた経験のある人がほとんどを占め、お客様の関心が高い状態が続いています」とFT&SV 2025の策定をリードした富士通技術戦略本部テクノロジーマーケティング戦略統括部の西川博シニアディレクターは分析しています。
「AI が魔法の杖のように、大きく自社のビジネスを変えると期待しているリーダー層は引き続き多い状況です。一方で、企業の売上や利益にどれだけ貢献できるかといういわゆる投資対効果が見えないと話す人も出てきています」
実は、「AIへの投資を強化する」と回答した人は、前の年の調査と比較し11ポイント減少しています。(2024年度調査:88パーセント)この傾向について、西川は次のように解説します。
「AIをとりあえず使ってみようといった段階から、立ち止まってAIがほんとうは何に使えるのか、慎重に見極めるようになってきていると感じました。関心が高いのは間違いないのですが、AIに対する見方は人によって違ってきていますね」(西川)。
社会課題の解決につながるRegenerative ecosystems(再生型のエコシステム)
いま、ディープラーニングや生成AIのような従来のAI技術が成熟しつつあります。その一方で、収集・分析した情報を基に自律的に次のアクションを実行できる「AIエージェント」といった新しいAIが次々に発表され注目を集めています。FT&SV 2025では、AI技術が進化する中、ネットポジティブ(=企業が社会に与えるネガティブなインパクトよりポジティブなインパクトが大きい状態)な社会の実現に向けて、企業や一人ひとりの働き方がどのように変わるのかを考察しています。
富士通の今年度のビジョン全体を象徴するのが、ネットポジティブを実現する新しい価値創造エコシステム=「Regenerative ecosystems(再生型のエコシステム)」です。

「左の2つの円が示すのが、わたしたちの知識の幅が AI で広がる様子です。つまり、AIに相談したら新たな示唆を得られたり、一部の仕事を肩代わりしてもらえたりして、人の生産性は大きく向上すると考えています」と西川。
「右図では、生産性を高めた人とAIのネットワークが、企業のあらゆる領域に形成されています。10,000人の企業の全従業員がAIを使いこなすと、企業の力が増幅され、さらにその企業同士をAI がつなぎます。AIは企業がデータを共有したりサプライチェーンを構築したりするのを支援します。すると、業界を超えたエコシステムが生まれるでしょう。地球温暖化や高齢化といった社会課題に対し、AIが仲介するエコシステムで取り組むことで解決に導くというメッセージを表現しました」(西川)
ヒューマンセントリック:変わらない価値観
富士通は2013年より毎年、Fujitsu Technology and Service Visionとして未来のビジョンをまとめ、発表しています。2025年度のビジョンについて、西川はグローバルな政治や経済状況が激しく変化する状況下での策定は難しかったと振り返っています。様々な角度から描いた未来のストーリーの根底には、「ビジネス成長」と「社会貢献」、両方の達成が大切という共通目標があると話します。
「特に、サステナビリティへの取り組みについては、温室効果ガスの排出削減や多様性の尊重を掲げるだけでは十分ではなくなっています」と西川。
「富士通がずっと言ってきた価値観、人間が中心=ヒューマンセントリックであることが重要だという姿勢は10年以上変わっていません。むしろAIが進化する中、人を中心に置くという価値観は、今後ますます重要になると思います」
「ぜひ、富士通が提示する未来のシナリオについて、読む方の立場や企業に置き換えて読んでいただきたい。AI でこういうこともできるのではないかとか、このような社会課題の解決に向けて強みを活かせるのではないかとか、考えを馳せていただけたらと思います」(西川)。

Fujitsu Technology and Service Visionは、テクノロジーがこれからどのように進化していくのか。それにより社会やビジネスはどのような発展を遂げていくのかという富士通が考える未来のビジョンを、ステークホルダーの皆さまに対し毎年提示しているストーリーです。
2025年度のFujitsu Technology and Service Visionをぜひ、こちらからダウンロードください。
西川 博
Hiroshi Nishikawa
富士通株式会社 技術戦略本部
テクノロジーマーケティング戦略統括部
シニアディレクター
富士通入社後、通信装置開発、サーバー製品のグローバルアライアンス、M&Aを通じた欧州ビジネス拡大に従事した後、2014年より富士通のテクノロジービジョンの制作をリード。Stephen M. Ross School of Business MBA、大阪大学 理学研究科 物理学専攻修士。


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