新たな全社AI戦略を発表。富士通AIの強みとは。

執行役員のヴィヴェックと高橋が握手をしている写真

2024年3月12日

2024年2月14日、富士通は最新のAI技術と、お客様のビジネス成長と社会課題の解決に挑む事業モデルである「Fujitsu Uvance」を組み合わせた全社AI戦略に関するプレスリリースを公表し、その詳細を記者、投資家、産業アナリスト向けに紹介する「AI戦略説明会」を実施しました。

説明会の当日は、執行役員 SEVP CTO、CPO(兼)システムプラットフォームビジネスグループCo-Head Vivek Mahajan(ヴィヴェック マハジャン)からAIにおける当社技術戦略について、執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長(兼)全社Fujitsu Uvance担当 高橋 美波から事業戦略について説明が行われました。

本記事では、両者がご紹介した内容および、質疑応答でなされた会話からいくつか抜粋してお届けいたします。

AIにおける技術戦略 - Fujitsu Kozuchiの商用化を決定

執行役員のヴィヴェック マハジャンが登壇している写真
執行役員 SEVP CTO、CPO(兼)システムプラットフォームビジネスグループCo-Head Vivek Mahajan(ヴィヴェック マハジャン)

Fujitsu Kozuchiの商用化

マハジャン:2022年に大きな話題となった生成AIの登場により、AI技術の生産性や創造性は高まる一方ですが、人間がAIを正しく使いこなすためには「信頼できるAIをシステムに実装」し、「AIリテラシーを身に着ける」ことが重要です。わたしたちは、これらを正しく理解・実行することで、「AIはわたしたち(人間)のバディとなる」と考えています。

富士通は、2023年4月、先端AI技術を迅速に試すことができるAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」をリリースし、これまでの約10ヶ月間で、およそ500のお客様へご提案、PoCを実施してきました。この度、そのノウハウや知見をベースにFujitsu Kozuchi(注1)をさらに発展させ、商用化を決定しました。

「AIはわたしたち(人間)のバディとなる」と説明するスライド画像

ここからは、独自の生成AI技術や、AIと計算技術の融合によりお客様のAI導入を加速させた事例などを含む、富士通のAIの強みをご紹介します。

富士通のAIの強み①:独自の生成AIとトラスト技術

一つ目の強みは、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したLLMの並列計算学習手法の研究に加え、オープンLLMをベースに追加学習とチューニングを行い、日本語の性能を追求した特化型モデルを開発し、ベンチマーク性能で最高レベルを達成したことです。さらに、現在は、画像生成やコード生成などの領域に特化した生成AIの開発を進めており、これらとパートナー企業の複数の生成AIモデルを効率的に組み合わせる生成AI混合技術の開発も進行中です。2024年4月からは、富士通の最先端技術を無料で体験できる「Fujitsu Research Portal」を通じて順次提供予定です。一例として、REMOW社とのクリエータ向け作画支援事例を紹介します。

富士通の独自生成AI技術事例(REMOW社との事例)
富士通の独自生成AI技術事例(REMOW社との事例)

富士通のAIの強み②:世界最高レベルのAI×コンピューティング

二つ目の強みは、ヒューマンセンシング技術や因果発見技術等、世界最高レベルのAI技術とスパコン・量子など富士通の世界最先端の計算技術の融合が可能な点です。
富士通独自の生成AI技術と理化学研究所の創薬分子シミュレーションの知見を活用し、標的タンパク質の構造変化の予測を従来の1日から2時間に短縮した例があります。困難とされていた、数万次元の情報をもつ標的タンパク質の構造や動的変化の把握を、タンパク質の形状を低次元で捉えることにより、その立体構造と連続変化の定量的な予測を実現しました。
このタンパク質の構造変化の予測技術は2023年10月よりFujitsu Kozuchiで提供済です。

AI×コンピューティングの事例
AI×コンピューティングの事例

富士通のAIの強み③:7,000件以上の実績

三つ目の強みは豊富な実績です。富士通のAIには7,000件以上の実績があり、Fujitsu Kozuchiについても500件以上の提案やPoCが実施されるなど、国内はもちろん、海外も含めて様々な業種業態のお客様に使用して頂いています。

AIにおける事業戦略 - Uvanceの主要オファリングにAIを組み込む

執行役員の高橋美波が登壇している写真
執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長(兼)全社Fujitsu Uvance担当 高橋 美波

次に高橋から、AI技術をどのように事業に実装し、どのような事業戦略で社会を支えていくかの説明が行われました。

高橋:クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するFujitsu UvanceへのAI実装を加速させることで、お客様のSXの加速に寄与します。

また、自身で利用したいというお客様のために、PaaS基盤(Fujitsu Data Intelligence PaaS)とコンサルティングサービスを2024年3月よりリリースします。本PaaSはデータ基盤にPalantir、Azure、AWSを用い、Fujitsu KozuchiのAI群、そしてブロックチェーンを加えた3つで構成しています。

PaaS基盤とコンサルティングサービスの開始
PaaS基盤とコンサルティングサービスの開始

ここからはUvanceオファリングへのAI実装や、DI PaaS、コンサルティングサービスについて、実例を交えながらご紹介いたします。

事例 AIによる需要予測とSCM強靭化

大手製造業のAI活用とDI PaaSの先行事例です。全てのSCM(サプライチェーンマネジメント)のデータを統合することで高精度な生産計画、在庫、発注管理を実現しています。
能登地震の際には、地震発生2日後に、生成AIと対話をしながら損益インパクトを把握しました。予測モデルを他社の10~100倍のスピードで生成することができるAutoML(注2)を用いて、主要部品毎の在庫予測モデルを、300種類も、わずか2か月で構築・運用に載せました。PSI計画(注3)の精緻化に寄与し、億単位の大きな効果を上げています。

  • (注2)AutoML:Automated Machine Learning。械学習モデルの設計や構築のプロセスを自動化する技術のこと
  • (注3)PSI:Production(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)の3つを表す用語
事例 AIによる需要予測とSCM強靭化 のスライド画像

新オファリング 生成AIによる治験文書作成のプロセス変革

既存のドキュメントや企業内データから生成AIが治験関連文書を自動作成します。膨大な手間と時間がかかっている治験業務にAIを活用することで、1日でも早く必要な患者に新薬を届ける支援し、世界の健康をサポートする基盤としていきます。

Healthy Livingの新オファリングである、生成AIによる治験文書作成のプロセス変革の紹介スライド。2024年4月から提供開始予定。

このように、お客様やパートナー様を含め、AIのクロスインダストリーな展開を加速させることで、より一層、お客様やパートナー様と共に社会課題の解決に取り組んでいきます。

新サービスの体制や売り上げは?他社にはどのように対抗するのか?

最後に説明会の後半に行われた質疑応答で飛び交った質問から3つを抜粋し、お届けいたします。

――新たにリリースするPaaSとコンサルティングサービスの体制を教えてください。

回答:Fujitsu Data Intelligence PaaSとテクノロジーコンサルティングサービスは、2024年3月末から国内で、そして4月末からは海外でも提供を開始する予定です。PaaS基盤については、国内外に数百人規模の開発チームを配置しており、また、コンサルティング部門では国内で50人のチームを組織しています。

――新サービスについてどれくらいの売り上げを見込んでいるのでしょうか。

回答:Uvanceは2025年度に7,000億円の売り上げを目指しております。その達成のためにFujitsu Kozuchiを導入し、競争力を確保するつもりです。7,000億円の達成には、Fujitsu Kozuchiが重要な役割を果たすことになります。

――生成AIはグローバルではオープンAIを担いでいるMicrosoft社や基礎技術があるGoogle社が先行しているイメージですが、富士通はどのように対抗していきますか。

回答:一社ですべての問題は解決できません。対抗というより、パートナーシップを組み、協業していきたいと考えています。富士通が作ったLLMと他社のLLMを組み合わせる等、富士通の持つ優位性・富士通にしかできない分野において他社と連携を強化していき、社会課題解決に繋げてまいります。

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この記事を書いたのは

フジトラニュース編集部
「フジトラニュース」では、社会課題の解決に向けた最新の取り組みをお届けします。

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