Fujitsu Enterprise Postgres 18 SP1 リリース

AI技術の急速な進化に伴い、企業におけるAI活用への期待は高まる一方、AIモデルの学習や運用には膨大なデータと、それを効率的に処理・管理するデータベースが不可欠です。また、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中で、基幹システムを支えるデータベースには、これまで以上に堅牢性と柔軟性が求められています。
富士通のデータベース「Fujitsu Enterprise Postgres(以降、Enterprise Postgres)」は、オープンソースのPostgreSQLをベースとし、富士通が培ってきた信頼性技術とエンタープライズ領域でのノウハウを融合したデータベースです。今回の機能強化は、こうした市場のニーズにいち早く応え、企業のデータ活用を次のレベルへと引き上げることを目指しています。リレーショナルデータベース(RDB)は、単なるデータ格納庫ではなく、AIをはじめとする先進技術と連携し、ビジネス価値を創出する中核的な役割を担うようになってきています。

本記事では、Enterprise Postgres 18初版と、2026年4月にリリースされたSP1での強化内容を合わせて「Enterprise Postgres 18」としてご紹介します。

Enterprise Postgres 18 ご紹介

以下の図は、Enterprise Postgres 18が提供する機能の概要です。Enterprise Postgres 18では、従来のAIアプリケーション開発を支援する「知識データ管理」をさらに強化し、加えて、ミッションクリティカル対応を強化する「マルチマスターレプリケーション」を提供しています。

Enterprise Postgres 18が提供する機能

PostgreSQL 18の機能の詳細については、PostgreSQLメジャーコントリビューターのAmit Kapilaが技術者Blogで解説していますので、併せてご覧ください。

知識データ管理機能の強化

生成AIの回答精度向上と専門知識の活用において、RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれるアプローチが広く用いられています。Enterprise Postgresは、RAGの効果を最大化するため、外部データソースとして利用可能な知識データ管理機能を提供しています。知識データ管理機能は、以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

Enterprise Postgres 18では、AIアプリケーション開発を強力にサポートする知識データ管理機能を拡充しました。

  • データベース内での埋め込みモデル管理

    OllamaやOpenAIといった外部のベクトル埋め込みモデルだけでなく、ONNX(Open Neural Network eXchange)形式の埋め込みモデルをデータベースに取り込み、ベクトル変換を実行することが可能になります。Enterprise Postgresの知識データ管理機能は、RAGアプローチを採用するAIアプリケーションの開発と運用を強力にサポートします。これにより、開発者はより高性能で信頼性の高いAIアプリケーションを、より迅速かつ効率的に構築できるようになります。

  • 業務データ活用のためのMCPサーバ機能

    AIアプリケーションから業務データを安全に扱うための共通ルールであるModel Context Protocol(MCP)に対応しました。Enterprise Postgresに格納された業務データに対してMCP経由でアクセスできるようになることで、AIアプリケーションとデータベースの連携が容易になります。これにより、AIアプリケーション側で個別にデータアクセスの仕組みを作り込む必要がなくなり、業務データを使ったAI活用を、より安全かつ短期間で始められます。MCPを利用してLLMの判断でテキスト意味検索やハイブリッド検索を行うためのツールや、LLMによる自然言語からのSQL生成のためのツール定義をサンプルとして提供しています。

ミッションクリティカル対応の強化

ビジネスのグローバル化やデジタル変革が進む現代において、システムダウンはビジネス機会の損失に直結します。どんなに優れたサービスも、データが利用できなければ意味がありません。システムが停止することなく、常にデータを利用可能な状態に保つことの重要性が増しています。このような要求に応える技術の一つが「マルチマスターレプリケーション」です。

マルチマスターレプリケーションとは

マルチマスターレプリケーションとは、複数のデータベースサーバー(ノード)がすべてマスターとして動作し、相互にデータをリアルタイムで同期し合う仕組みです。これにより、どのノードに対してもデータの読み書きが可能となり、それぞれのノードが常に最新のデータを持つことができます。
通常のシングルマスター構成では、マスターがダウンするとシステム全体が停止するリスクがあります。しかし、マルチマスター構成では、たとえ一つのノードが被災しても、他の稼働しているノードでビジネスを継続できるため、災害発生時でも業務停止を極小化し、可用性を飛躍的に向上させることが可能です。

Enterprise Postgresのマルチマスターレプリケーション

Enterprise Postgresのマルチマスターレプリケーションは、エンタープライズレベルでのデータ管理と高可用性を実現します。

  • 双方向レプリケーションによるデータ同期:複数のリージョン間で双方向レプリケーションによって常にデータが同期され、どのノードも最新のデータを保持します。複雑な設定や特別なツールは必要ありません。
  • データベース二重化による高可用性:各リージョン内では、データベース二重化(プライマリ/スタンバイ構成)により高可用性を確保します。広域災害から局所的な障害まで幅広く対応できるシステム構築が可能です。
  • 災害時も業務継続:各リージョンが相互にデータを持ち合うことで、災害発生時においても、稼働中のリージョンに切り替えて業務を継続できます。これにより、システム全体のダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。
  • 差分反映のみで迅速な復旧:復旧時には差分反映のみで再開できるため、再同期(全コピー)の長時間の待機は不要です。迅速な復旧を実現します。
  • リソースの有効活用:全てのノードが稼働するため、災害対策専用の待機系リージョンが不要となり、リソースを最大限に有効活用できます。
  • レプリケーション設定:レプリケーションに含めるテーブルと除外するテーブルを指定する独自関数を提供します。より安定したレプリケーション環境とEnterprise Postgresの提供する機能とのシームレスな連携を実現します。
PostgreSQLのコミュニティ版とEnterprise Postgresにおける災害対策の違い。Enterprise Postgresは、災害発生時でも業務を継続できる高可用性を提供していることが示されています。

さらに、本バージョンで強化されたConnection Manager のHA構成でのロードバランシング機能により、システム全体の安定稼働と運用効率の向上が可能です。

ロードバランス

従来のラウンドロビン方式に加え、接続が偏っている場合、待機中の複数のスタンバイサーバの中から最も接続数の少ないサーバへ自動で接続を振り分けます。これにより、リソースの有効活用とシステムの応答性能を高めます。

参照コネクションの再配分

障害発生時のスタンバイサーバの昇格や、スタンバイサーバの追加など、システム構成が変わるときに、接続が偏ったり、不完全な状態のサーバを参照する場合があります。今回の強化では、そうした場面を自動で回避できます。
スタンバイの追加や停止で接続が偏った場合は、次のクエリ開始のタイミングで既存の参照接続を整理し、アプリケーションに再接続の機会を与えます。これにより接続数の偏りを解消し、特定のサーバだけが重くなる状況を避けられます。

未同期スタンバイサーバの参照除外

さらに、昇格直後や初期同期の途中で、プライマリサーバとまだ完全に揃っていないスタンバイサーバは、参照先の候補から外します。フェイルオーバー直後の不安定なときでも、誤って古い状態に基づいた処理をしてしまう心配がありません。
これらの機能により、アプリケーション側に複雑な再接続のロジックを抱え込ませることはありません。障害時にも手戻りが少なく、スムーズな切り替えが可能になります。
 
これら主要機能の強化に加え、運用構成の柔軟性を高める機能も拡張しています。OSSのPatroniとetcdのサポートにより、複数レプリカを持つ構成が可能となり、自動フェイルオーバーと参照性能の両立を図れます。さらに、クラウド環境ではAmazon EC2 Auto Scalingと連携することで、負荷に応じてレプリカ数を自動調整でき、運用効率を高めます。

おわりに

Enterprise Postgresは、PostgreSQLコミュニティーに参画し、ミッションクリティカルな要件に応える機能強化を継続していきます。DXの実現を加速させるためには、生成AIの活用は不可欠であり、これを支える適切なデータベースの選定が重要です。DXの実現に向け、Enterprise Postgresの導入を是非ご検討ください。

2026年4月公開

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