PRESS RELEASE
台湾Acer Medical社と富士通、AI活用により高齢者の歩行パターン異常を検知し、将来の疾病リスク評価に向けた基本合意書を締結
2025年7月16日
Acer Medical Inc.
富士通株式会社

AIを活用した医療画像処理および予防医学を提供する台湾のAcer Medical Inc.(注1)(以下、Acer Medical)と富士通株式会社(注2)(以下、富士通)は、「Fujitsu Uvance(フジツウユーバンス)」のオファリング「AI Technologies and Solutions」から提供する「Fujitsu Kozuchi for Vision」の骨格認識AI(以下、骨格認識AI)の活用により、高齢者の歩行パターンの異常を検出し医療従事者に定量化した歩行情報を提供することで、認知症やパーキンソン病などの早期把握を支援するソリューション「aiGait(エーアイゲイト)」powered by Uvance(以下 「aiGait」)の開発について、2025年6月25日に基本合意書を締結しました。Acer Medicalは、台湾の台北栄民総病院(Taipei Veterans Hospital)併設のデイケアセンターにて、本ソリューションの実証実験を予定しています。この実証実験では、椅子から立つ、座る、歩くといった人の動作をカメラで撮影し、骨格認識AIを用いて認知症などの疾病の患者特有の動作との共通点の有無を検証します。本ソリューションは、2025年中にAcer Medicalより台湾全土の高齢者ケア施設への導入が予定されています。
Acer Medicalは、同社が開発するモバイル端末で簡易に利用できるソリューション「aiGait」に、富士通の高精度な骨格認識AIを統合することで、立つ、座る、歩くなどの日常的な人の動作を、医学的に意味のある情報に変換させて、介護者や医療従事者による病気の早期発見支援に貢献します。本取り組みは、ヘルステックを最も必要としているコミュニティに、リーズナブルな価格で効果的なヘルスケアソリューションを提供するというAcer Medicalの描くミッションを体現しています。
富士通は、「Fujitsu Uvance」のもと、様々なパートナーとのエコシステム、Uvance Partnerを構築・拡大しながら、データとAIを活用して社会課題の解決に取り組んでいます。今回、Acer Medicalが、富士通の世界最先端の高精度な骨格認識AIを組み込んだ新たなソリューション「aiGait」powered by Uvanceを開発し、両社で協働して認知症およびパーキンソン病の早期把握支援という社会課題への取り組みを加速していきます。
背景
台湾では、65歳以上の認知症患者数は2024年に約35万人、2041年には約68万人に達すると推測されています(注3)。疾患の進行鈍化や医療費の削減を図るとともに生活の質を維持するためには、早期の治療開始が重要です。そのため、高齢者のライフスタイルに溶け込んだ簡易なかたちで病気を早期発見する手段の提供が期待されています。従来の健康状態の評価方法であるTUGテスト(注4)などは現場担当者のマニュアル作業に依存しており、評価者の経験や主観によって結果にばらつきが生じるという課題がありました。
取り組み概要
台湾の医療機関に併設される高齢者向けデイケアセンターなどにおいて、介護者や看護師がスマートフォンやタブレットを用いて、対象者の歩行や椅子から立つ、座るなどの簡単な動作を撮影し、「Fujitsu Uvance」の「AI Technologies and Solutions」を搭載したAcer Medicalのアプリケーション「aiGait」powered by Uvanceで簡易分析を行います。この分析は病気の兆候を早期に把握するためのスクリーニング手段であり、看護師や介護士は自動生成されるレポートを確認し、対象者の動作が予め設定した正常な範囲から逸脱している場合は、医師による診察受診を促し病気の早期発見につなげます。
Acer Medicalは、実証実験で認知症やパーキンソン病などをはじめとする高齢者に多くみられる疾患の予兆を簡易に把握するため、看護師や介護士などの専門家のフィードバックを取り入れ、「aiGait」powered by Uvanceのユーザエクスペリエンスを向上させます。

「Fujitsu Uvance」の 「AI Technologies and Solutions」の骨格認識AIの特長
- 富士通は、データとAIによる意思決定の高度化に取り組んでおり、本オファリングは、世界初で唯一の国際機関が公認する競技用AI採点サポート実績を有し、体操採点支援システムで培った高精度な骨格認識AI技術をベースに、人の動きの計測や検出を支援
- Motion-constraint Correctorと呼ばれる独自の補正アルゴリズムにより、認知症やパーキンソン病などの疾病の特徴的な動作において、ディープラーニングによる画像解析で課題だった姿勢認識のジッタ(推定誤差)を大幅に低減
- AIが学習する際に必要な大量のデータをZero-Annotation 3Dデータ生成技術により人工的に生成し、学習期間を1000分の1に短縮。従来の数か月の手動作業を、数時間で生成させることが可能
- 3Dデータで学習したAIモデルを2Dエンジンに適用することで、スマートフォンやタブレットで撮影した動画でも高精度な分析を可能にし、現場の負担を最小限に抑えながら、信頼性の高い人の動きの解析を実現
今後について
両社は本ソリューションを、高齢者ケアのみならずスポーツ科学分析や小児神経発達障害、脳性麻痺へ活用することも目指していきます。
富士通は、社会課題の解決を起点とした事業モデル「Fujitsu Uvance」のもと、今後もUvance Partnerとの共創を通じて、データとAIを活用したDecision Intelligenceにより高度な健康管理サービスを実現し、人々のウェルビーイングの向上を前進させます。
Acer Medical Inc. 会長 Allen Lien博士のコメント
この協業は、台湾と日本の技術的および臨床的な専門知識を融合させ、高齢化社会における予防医療とスマートヘルスケアの需要拡大に対応します。Acer Medicalは、医療従事者や介護者からのフィードバックを積極的に収集し、ユーザー体験の向上に努め、ソリューションの実用性と拡張性の向上を目指します。
富士通株式会社 Human Digital Twin事業部 事業部長 藤原 英則のコメント
Acer Medicalとの協業を通じて、「Fujitsu Uvance」の骨格認識AIが認知症やパーキンソン病などの疾病早期把握支援に貢献できることを大変光栄に思います。Acer Medicalのヘルステック分野における卓越した専門性および実績と、当社の人の動きを手軽かつ高精度に解析できる技術およびノウハウを融合することで、グローバルに展開可能なソリューションの創出が実現しました。
本取り組みは、世界保健機関(World Health Organization)が提唱する「健康な高齢化」の実現にも資するものであり、台湾での普及を通じて得られる現場での経験を活かしながら、高齢化する世界が抱える課題の解決に寄与していきたいと考えています。
Powered by Uvance / Uvance Partnerについて
「Fujitsu Uvance」の目指す持続可能な世界に向けたサスティナビリティ・トランスフォーメーションには、多様な知見と技術を結集し、共に未来を創造するパートナーの存在が不可欠です。これらUvance Partnerは、「Fujitsu Uvance」のオファリングを組み込み、最先端技術やノウハウを活かした革新的なPowered by Uvance製品を開発、提供します。富士通は、Uvance Partnerと共に成長し、ビジネスの拡大と社会課題の解決に向けて取り組んでいきます。
注釈
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注1 Acer Medical:
本社 新北市(New Taipei City) 台湾、CEO(執行長) Kai-Cheng Hsu
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注2 富士通株式会社:
本店 神奈川県川崎市、代表取締役社長 時田 隆仁
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注3 データ元:
台湾国立衛生研究所 (NHRI) の調査
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注4 TUGテスト:
タイムアップアンドゴーのことで、高齢者に対して、バランスや運動器不安定症の検査、転倒リスクの予測として活用される評価方法
関連リンク
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