サプライチェーンのESGデータ連携が鍵 ネットポジティブ実現への課題解決策とテクノロジー

明るいオフィスで、緑色のジャケットを着た女性が隣にいる女性のノートパソコン画面を指差しながら、彼女と協力して作業している。

Article | 2025年12月15日

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企業の持続可能な成長とネットポジティブ実現において、サプライチェーン全体のESGデータ連携が大きな課題となっていることが調査で判明しました。本稿では、この課題に対し、サプライヤーとの合意形成の重要性や、セキュアなデータ共有を可能にするテクノロジーがどのように解決の鍵となるかを解説します。

ネットポジティブとは?

ネットポジティブとは、企業活動がもたらす「ネガティブな影響」を最小化するにとどまらず、社会や環境に対して能動的に「ポジティブな価値」を創出しようとする概念です。
このたび、Economist Impactが17カ国で事業を展開する5業界(金融、製造、運輸、小売、エネルギー・社会インフラ)のCxOおよび意思決定者層1800名を対象に、企業が“ネットポジティブ”にどのように取り組んでいるかを独自に調査しました。調査の結果と洞察は、「ネットポジティブインデックス調査レポート:エグゼクティブ・サマリー」で紹介しています。

本稿では、ネットポジティブインデックス調査で実施したアンケートの結果を基に、ネットポジティブの目標達成を阻んでいる要因について考察します。

ネットポジティブ推進に必要なESGデータ収集・活用とその重要性

企業活動が社会・環境へ与える影響に関するデータを収集・活用することは、ネットポジティブの実現に寄与します。本調査によると、最もネットポジティブの達成度が高い地域・業界は、ヨーロッパの小売業でした。この地域・業界に属する企業の多くは、データ収集が社会・環境面のマイナス影響の削減に「大いに役立った」と回答しています。調査対象の企業全体の回答をみても、データ収集はネットポジティブの推進に「有意に(28.1%)」「中程度に(50.2%)」役立っているとなっています。

富士通のネットポジティブの取り組みにおいても、社会・環境へのインパクトに関するデータを計測し、それぞれのプラス影響とマイナス影響を可視化することがファーストステップでした。データを収集し、プラス影響の最大化とマイナス影響の最小化を追求し、ネットポジティブの成熟度を高めています。

サプライチェーンデータ連携がネットポジティブ目標達成の最大の障壁に

自社内のデータ収集・活用が成熟したら、次のステップは、外部とのデータ連携になります。本記事末尾の関連コンテンツ「限られた経営資源で持続可能な成長をかなえるための経営戦略」では、ネットポジティブの実現に向けたファーストステップは、(特に経営資源の限られた中小企業において)情報収集と外部連携の積極化であると述べました。自社のビジネスのステークホルダーとネットポジティブに関するデータを開示し合い、データを統合することで、サプライチェーン全体の社会・環境へのプラス影響の最大化、マイナス影響の最小化を推進していくことができます。

しかしながら、外部とのデータ連携は容易ではありません。本調査で、ネットポジティブ推進の障壁として最も回答数が多かったのが、「サプライチェーンの問題(例:透明性やサプライヤーの協力の欠如)」で、53.9%でした。サプライチェーン全体のデータを高度に統合している企業は全体の14.5%にとどまっています。

棒グラフによる調査結果。上から順に、サプライチェーン問題 (53.9%)、サステナビリティ目標とビジネス優先事項の対立 (52.9%)、規制ガイダンスの不足 (47.0%)、組織内の変化への抵抗 (46.4%)、サステナビリティ予算の不足 (32.0%)、業界他社におけるサステナビリティへのコミットメント不足 (31.0%)、競争力低下への懸念 (27.1%)、適切な技術インフラ不足 (25.8%)、持続可能な代替手段の不足 (25.7%)、外部連携の不足 (25.7%)、管理スキルギャップ (21.9%)、従業員スキルギャップ (20.6%)、リーダーシップからの賛同不足 (9.7%)。出典: Economist Impact。

ESGデータ連携の課題を解決するテクノロジーと富士通のソリューション

富士通は約20社との連携を掲げ、現在(2025年10月末時点)19社のサプライヤーとのデータ連携に成功しています。しかし、ここに至るまでに様々な課題に直面してきました。具体的には、サプライヤーのデータ共有への賛同、データ連携ための国際規格・国内規格への対応、情報漏洩への懸念などです。

サプライヤーからの賛同については、各社と個別に対話を重ね、取り組みの重要性を共有していきました。規格への対応については、国際・国内の両規格に沿うデータモデルと連携方式を整備し、相互運用性を確保しました。

そして情報漏洩への懸念は、テクノロジーで解決してきました。本調査によれば、業界内外のステークホルダーとデータを安全に共有するテクノロジーを導入している企業はまだ2割程度です。しかし、ネットポジティブ推進の壁を越えるテクノロジーは、すでに用意されています。富士通は、Uvanceのオファリング「Sustainability Value Accelerator」を活用し、秘匿性を確保しながら社外とデータ連携できるシステムを開発して、サプライチェーン全体のGHG排出量の可視化を実現し、環境負荷低減に貢献することで、ネットポジティブな持続可能な成長を目指します。

まずは、自社のネットポジティブ成熟度をチェックしてみませんか?

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ネットポジティブ実現に向けて
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