AIビジネス活用の課題を解決する富士通のテクノロジー 生成AIとAIエージェントの力で企業の未来を切り拓く

生成AIとAIエージェントがデータを連携し、未来のビジネス革新を推進するデジタルネットワークのイメージ

Technology News | 2025年11月19日

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生成AIは、文章や画像を生成する「ツール」から、「自律的にタスクを実行するエージェント」へと進化し、企業でのビジネス活用への期待がますます高まっています。一方で、生成AI黎明期から指摘されていたハルシネーションや計算リソース増大などの特性は、ビジネスで使う上での「懸念」から、「速やかに解決すべき課題」となって顕在化しています。

本稿では、企業が生成AIとAIエージェントを深くビジネス活用していく上での課題を解決する富士通の最新技術を紹介します。

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生成AIの超軽量化で広がるユースケース

生成AIの市場は拡大を続けていますが、高性能化に伴い必要な計算リソースが増大してきました。モデルの大規模化は、企業が個々の用途で必要とする性能要求に対応しきれず、カスタマイズも難しいという問題を引き起こしています。

この課題を解決するために、富士通の生成AI開発は、企業がビジネス活用することを前提とした小規模・領域特化の生成AIモデルを追求しています。

2025年9月、大規模言語モデル(LLM)の精度を維持したまま94%軽量化する「1.0ビット量子化技術」を開発し、当社のLLM「Takane」に適用しました。量子化(※量子コンピューティングの技術とは分野が異なります)とは、情報の解像度を下げて軽量化する技術で、富士通は世界で唯一、32ビット/16ビットの情報量を1ビットにすることに成功しました。モデルの大幅な軽量化・省電力化により、生成AIの適用範囲がロボットやエッジAIなどへと広がります。

さらに、「特化型AI蒸留技術」では、脳が必要な知識を強化して不要な記憶を整理するように、AIモデルの構造を最適化することで、軽量化、高速化に加えて特定タスクでの精度向上までも実現しました。これにより、ユースケースに合わせてAIモデルを最適化できるカスタマイズ性を備えました。

データ構造化×分析高度化がもたらす新たな知見

生成AIがビジネスの用途で能力を発揮するには、企業データを十分に活用する必要があります。企業データの90%は非構造データであり、これらを体系的に整理して構造化し、互いのデータを関連付けて知見を引き出せるようにする技術が求められます。

富士通が提供する「ナレッジグラフ拡張RAG」は、Takaneを活用して企業データを構造化するナレッジグラフを自動生成し、生成AIに正確な知識を提供します。

そして、データの構造化が完了すると、データ分析の高度化が可能になります。富士通は、ビジネスの事象間の因果関係を高度に分析し、経営の意思決定を支援する「因果AI」分野で多くの知財を有しています。データ構造化技術×因果AIにより、遺伝子と生活習慣の関係を明らかにする(株式会社ジーンクエスト様と富士通とのリリース[1])、小売業のPOSデータを活用して来店率と顧客単価の関係を導出して店舗売上拡大施策を打つといったことが可能になります。

また、グラフ構造の生成コンテキストをLLMベースで学習したグラフAIを用いて、高度に複雑な遺伝子ネットワークからがんや希少疾患の新たな治療の発見が可能となります。

領域特化と自律改善によるセキュアで高品質なAIエージェント

生成AIが進化し、複数の生成AIモデルを使って自律的にタスクを実行するAIエージェントのビジネス活用も始まっています。富士通は、AIエージェントを領域特化し、セキュアにワークフローの品質を自律改善する「マルチAIエージェントフレームワーク」を提供しています。

AIエージェントのビジネス活用において肝になるのは、企業の実環境の中で複数エージェントと協調しながら業務を遂行する技術です。富士通のマルチAIエージェントフレームワークは、人やロボット、他のエージェントから知識を習得し特定領域で成長しながらワークフローを遂行する機能、人やロボット、他のエージェントから得られる部分的な情報をもとに交渉によってエージェント間の連携を最適化する機能、エージェント同士のやりとりを適切に監視し多様な制約を考慮しながらセキュアにワークフローを遂行する機能を提供します。
また「マルチAIエージェントフレームワーク」のコンセプトに基づいて、富士通の最先端エージェント技術を試行可能な基盤Enterprise AI Agent Platformを実装し、Fuitsu Kozuchiでトライアル環境の提供を開始しています。

富士通 Kozuchi Multi AI Agent Frameworkの全体構成図。業務アプリからAIエージェント、モデル、インフラまで要素を示す。

ソブリンAI領域での共同研究を強化

生成AIで企業の競争力強化を支援していくために、富士通は、開発した最新技術をいち早くお客様環境に展開したいと考えています。特に今後は、ソブリンAI(国内や自社のインフラ内でAIシステムを完結させる形態)の領域で、政府や企業との共同研究や実証を推進し、それらの成果について富士通のIPについては他企業への展開できるようにFujitsu Kozuchiに統合していく計画です。

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