データ連携は「つなぐだけ」では終わらない!
~本番運用の壁を乗り越えるサービスオーケストレーションとは~

企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させ新たなビジネス価値を創造していくためには、企業内の様々な活動で生み出されるデータを有機的に結合して一元的に活用する「データ連携」が必要不可欠です。

企業のデータ連携は、PoC(Proof of Concept: 概念実証)では順調に見えても、本格開発を開始した途端、“現場の業務要件”の思わぬ複雑さに直面するケースが少なくありません。本記事では、PoCで見過ごしがちな「本番運用の壁」と、それを乗り越えるためのカギとなる「サービスオーケストレーション」について解説します。

1. DXのためのデータ連携に必要なこと

システム間のデータ連携を実現する手段として、iPaaS(integration Platform as a Service)の利用が一般的になってきています。iPaaSは、企業内の異なるシステムやアプリケーションを統合し、データ連携を支援するクラウドベースの基盤サービスです。iPaaSであらかじめ用意された仕組みやテンプレートを組み合わせることで、システム間のデータ連携の手間を大幅に減らすことができます。

表:iPaaSの例

株式会社セゾンテクノロジー
HULFT Square
  • 分散したデータをノーコードで一元的に統合・管理
  • 既存のHULFT資産を活かした連携に加え、様々なデータベース、ファイル、SaaSに標準で対応
Informatica
Intelligent Data Management Cloud
  • AIを活用した高度なデータ統合
  • データマネジメントに必要な様々な機能を包括

一方、DXのためのデータ連携では、ビジネスと密接に関係しその根幹を支える、「基幹システム」を避けて通ることはできません。なぜなら、販売・在庫・会計・生産・人事など、企業の中核業務に関わるデータはDXの成否を分ける極めて重要な要素であり、これらのシステムに蓄積されたデータは、正に「宝の山」と言えるからです。

2. iPaaSだけでは解決困難な「本番運用の壁」

基幹システムは企業固有の要件や独自の業務特性に対応した様々なシステムで構成されていることがほとんどです。このため、データ連携を行う際にも、基幹システム側の業務要件に対応し、密接に関係する複数システムにまたがる制御を確実に実施していく必要があります。これがDXのためのデータ連携における「本番運用の壁」です。乗り越えなくてはならない壁の例を以下に示します。

①営業日や休日を考慮した処理スケジュールの設定

ビジネスの根幹を担う業務への影響を最小限にするため、本番運用中の基幹システムへのアクセスは「必要なものだけを必要なタイミングでのみ行う」ことが強く求められます。そのためには、「毎営業日の深夜3時」「毎月20日締め」「月の最終営業日」といった企業独自の複雑な業務カレンダーに従って行われる基幹システムでの処理に対応した、厳密なスケジュール制御が不可欠となります。「空振りでもよいのでとりあえず毎日動かす」といった単純な設定は、本番運用では適切ではありません。

②複数システムでの処理順序の管理

複雑な業務を担う基幹システムのデータ連携では、処理順序の管理も一筋縄ではいきません。たとえば、処理の完了判定一つをとっても、システム内での一時的な失敗・再実行・遅延などの可能性を含め、状態を各システム固有の方法で正確に把握する必要があります。さらに、後続のシステム側でのオンライン処理の完了を待って処理を引き渡すなど、複数システムの状況を相互に監視しながら実行順序を制御することが必要な場合もあります。単に「順番に処理を実行する」という機能だけでは、本番運用への対応は困難です。

③関連データの準備がすべて整うまで待機する「そろい待ち」

様々な拠点で処理されたデータを集約する場合、各拠点の業務量やネットワーク状況によって処理完了時間は日々変動します。処理ロジック上は「データがそろうまで安全のために数時間待つ」といった固定の待ち時間でも対応できそうに思えますが、それではビジネスに必要なデータ処理が毎日数時間遅延してしまうことになります。このため、本番運用では、完了順序に依存せずすべてのデータがそろうのを検知して即座に次の処理を開始する『そろい待ち』のしくみが不可欠となります。

④エラーリカバリ

「エラーが発生したら最初からすべてやり直す」という素朴なリカバリ方法は、PoCでは許容できても本番運用では現実的ではありません。なぜなら、本番運用での連携データは膨大であり、基幹システムに再度大きな負荷をかけることは、業務に影響を与えかねないからです。このため、本番運用では、原因箇所と影響範囲を速やかに特定し、失敗した箇所とそれに依存する後続処理だけを再実行するといった、データ連携プロセス全体を見据えたエラーリカバリが必須です。

本番運用の壁を乗り越えるには

上記のような制御を、開発コストをかけて無理にiPaaSだけで実現しようとしても、結局は業務要件を完全には満たせなかったり、エラー判断やリカバリ処理に不足が生じたりすることが少なくありません。

この壁を乗り越えるためには、システムを「つなぐ」ことにiPaaSを活用しつつ、データ連携運用全体の品質を維持し、処理全体を柔軟に制御するための別の仕組みを考えていく必要があります。

3. 解決のカギ「サービスオーケストレーション」とは

iPaaSだけでは対応が難しいデータ連携の壁は、サービスオーケストレーションと組み合わせることで解決できます。

サービスオーケストレーションとは、基幹システムを含む複数のシステムやサービスを全体俯瞰し、安定的な処理実行を制御する仕組みです。この仕組みはiPaaSやクラウドサービス連携の上位に位置し、データ連携に関わるプロセス全体を一元的に管理、可視化します。個々のiPaaS製品だけでは実現が困難だった、厳格な実行制御や柔軟なフロー制御、複雑なエラーハンドリングなどに対応しており、企業の業務特性に合った複数システム間でのデータ連携プロセスを構築できます。

図:サービスオーケストレーションの適用イメージ
図:サービスオーケストレーションの適用イメージ

4. サービスオーケストレーションとiPaaSの連携

サービスオーケストレーションとiPaaSの連携について、Fujitsu Workload Operations Integrator(富士通株式会社)とHULFT Square(株式会社セゾンテクノロジー)を例に説明します。Fujitsu Workload Operations IntegratorとHULFT Squareは専用のアダプターによりノーコードで連携でき、親和性の高い組み合わせです。

Fujitsu Workload Operations Integrator

Fujitsu Workload Operations Integratorは、デジタルサービスの安定運用を実現、DX加速に貢献するサービスオーケストレーションのためのソリューションです。iPaaSを含む様々なクラウドサービスや既存システム上の処理を一元的に制御し、プロセス全体を可視化することにより、個々のデータ連携処理だけでなく業務プロセス全体の信頼性を担保することができます。

さらに、基幹システム側のジョブ管理製品や、長年培われてきた業務特性を管理するノウハウを統合し、企業固有の営業日/休業日に対応するためのスケジュール設定機能や、複数システム間での処理順序やそろい待ちなどの複雑なフロー制御、きめ細かなリカバリ操作を標準で提供しています。

図:Fujitsu Workload Operations Integrator
図:Fujitsu Workload Operations Integrator

Fujitsu Workload Operations IntegratorとHULFT Squareの連携

Fujitsu Workload Operations Integratorがデータ連携や関連する処理全体を上位レイヤーから一元的に制御し、HULFT Squareが既存システムやクラウドサービス間での接続、データ抽出を行うように構成します。

それぞれの特長を生かした役割分担により、企業固有の要件や独自の業務特性に応じたデータ連携を、安全・迅速に実現することができます。

図:Fujitsu Workload Operations IntegratorとHULFT Squareの連携
図:Fujitsu Workload Operations IntegratorとHULFT Squareの連携

5. まとめ

本記事では、初期検討やPOCでは見落としがちなデータ連携の本番運用の壁と、それらを解決するためのカギとなる「サービスオーケストレーション」について紹介しました。

単なるシステムの接続に留まらず、業務特性を深く理解し、予期せぬ事態にも対応できる堅牢なデータ連携基盤を構築するためには、既存の基幹システムの複雑性、絶えず変化するビジネス要件、そして日々進化するテクノロジーに対応しながら、最適なデータ連携運用を実現するサービスオーケストレーションが不可欠です。

Fujitsu Workload Operations Integratorは、HULFT Squareを始めとするiPaaSとの連携はもちろん、お客様独自の複雑な業務フロー全体を見据えた信頼性の高いサービスオーケストレーションを実現し、「止まらないデータ連携」でDXを加速させます。

より詳しく知りたい方に

備考
HULFT、HULFT Squareは、株式会社セゾンテクノロジーの登録商標です。
Intelligent Data Management Cloudは、Informatica LLCが所有する商標または登録商標です。
記載されている会社名、システム名、製品名、サービス名などの固有名詞は一般に各社の登録商標または商標です。
また、本文および図表中に記載されている会社名、システム名、製品名、サービス名などには必ずしも「TM」、「®」を付記しておりません。

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