AIの進化で変わる、データ保護の考え方

近年、Anthropic社の非公開の高性能AIモデル「Claude Mythos」に象徴されるように、AIの進化がサイバーセキュリティの前提を大きく変えつつあります。特に、従来は人手に依存していた脆弱性の発見を大幅に効率化し、防御側がより早くリスクに対処できる可能性が広がっています。
こうした技術の進展は高度な防御にも活用される一方で、悪用された場合には、未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃の脅威を高める可能性があります。
ゼロデイ攻撃において、最終的な標的となるのは多くの場合「データ」です。企業活動の中核を支えるデータベースには、個人情報や業務データ、知的財産といった高い価値を持つ情報が集約されており、攻撃者にとって重要な狙い所となります。
侵入を完全に防ぐことが難しい現状を踏まえると、「侵入を前提に、いかにデータを保護するか」という視点が欠かせません。本記事では、ゼロデイ攻撃時代におけるデータベースリスクを整理し、データベース暗号化の役割と、Fujitsu Enterprise Postgres(以降、Enterprise Postgresと略記します)が提供する透過的データ暗号化(Transparent Data Encryption。以降TDEと略記します)の位置づけを解説します。

ゼロデイ攻撃時代のデータベースリスク

ゼロデイ攻撃では、脆弱性が公表・修正される前に悪用されるため、境界防御による侵入防止には限界があります。その結果、防御の重心は「侵入を防ぐこと」から「侵入を前提に、いかにデータを保護するか」へと移ります。
本記事では、データベース周辺で考えられるさまざまなリスクのうち、侵入後に、データベースのデータファイルが持ち出されたり、バックアップデータやトランザクションログ(WAL)が不正にコピーされたりするといったように、保存されたデータそのものが外部に流出するケースに着目します。
こうした状況を想定し、「侵入後もデータを守れるか」という観点から、侵入後のデータ保護に関する考え方を整理します。

なぜ「データベース暗号化」が重要なのか

侵入を前提としたセキュリティ設計において、最終的に守るべきものはデータそのものです。アクセス制御やネットワーク防御は重要ですが、データが持ち出された後の被害を直接防ぐことはできません。
データベース暗号化は、データファイルやバックアップが第三者の手に渡った場合でも、内容を解読できない状態を保つことで、情報漏えいの実害を抑制します。一方で、従来の暗号化はアプリケーション側の対応や運用負荷が課題となり、導入のハードルが高いケースも少なくありませんでした。
こうした課題を踏まえ、データベース層で暗号化を完結させる仕組みとして設計されたのが、Enterprise Postgresの透過的データ暗号化(TDE)です。

透過的データ暗号化(TDE)とは

TDEは、データベース内部のデータを、利用者やアプリケーションが意識することなく暗号化する仕組みです。Enterprise Postgresでは、テーブルやインデックスに加え、トランザクションログ(WAL)、一時ファイル、バックアップデータまでを暗号化対象としています。
暗号化・復号は、PostgreSQLサーバープロセスがストレージにデータを読み書きするときに自動的に行われるため、SQLやアプリケーションロジックを変更する必要はありません。既存システムにも適用しやすく、運用への影響を抑えながら暗号化を導入できます。

性能と運用を意識した設計

暗号化による性能低下を懸念する声もありますが、Enterprise PostgresのTDEでは、暗号化・復号をストレージアクセス時に限定しています。データがキャッシュ上に存在する場合には暗号化処理が発生しないため、通常のOLTP処理への影響は抑えられます。
また、暗号化キーは二層構造で管理され、運用者が直接扱うのはパスフレーズのみです。これにより、暗号化導入に伴う運用負荷を抑えつつ、鍵管理基盤と連携した高度な鍵管理にも対応可能な構成となっています。

暗号化だけで終わらない多層的セキュリティ

TDEは「持ち出されたデータを守る」ための重要な手段ですが、セキュリティ対策は暗号化だけで完結しません。Enterprise Postgresでは、権限管理によるアクセス制御や、操作履歴を可視化する監査機能と組み合わせることで、多層的なセキュリティ設計を実現できます。
これにより、侵入前の抑止・検知から、侵入後の被害抑制までをカバーする対策が可能になります。

侵入前提でデータを守る

ゼロデイ攻撃のリスクが高まる中、「侵入を防ぐこと」だけを目標としたセキュリティ設計は必ずしも十分とは言えません。侵入を想定したうえで、被害を限定し、影響を最小化できる設計が求められます。
Enterprise Postgresは、TDEを中心に、多層的なセキュリティを提供します。PostgreSQLをエンタープライズ用途で運用していくにあたり、「侵入後もデータを守れるか」という視点を設計に組み込むことが重要です。

Claude, Claude Mythosは、Anthropic, PBCの商標または登録商標です。

2026年7月公開

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