体験設計から始まるビジネス変革
AI時代、競争力を分けるのはUXだ
「AIを導入したものの、何が変わったのか分からない」
そんな声を上げる企業が増えている。富士通のコンサルティング事業Uvance Wayfinders(以下、Wayfinders)でエクスペリエンス領域を牽引するタライル・シリル氏は、こうした状況に対し「AI活用のカギを握るのはUXです」と語る。人とAIの接点となるユーザー体験をどう設計し、いかに革新的なものへと進化させていくのか。Wayfindersでは、UXを議論の共通言語とし、関係者の認識を揃えながら、構想を実装へとつなげていくアプローチを採っている。AI時代の顧客体験を継続的に進化させるための実践知を、シリル氏へのインタビューから探る。
※所属、役職名は取材当時のものです。
※本記事は、日経BPの許可により「日経ビジネスオンライン」に掲載された広告記事を抜粋したものです。(禁無断転載)
体験が企業競争力を決める時代
「AIが高度化するほど、“何ができるか”ではなく“どう使われるか”が重要になります。その差を生むのがUXです」(シリル氏)
ビジネスのデジタル化が急速に進む中で、テクノロジーをいかにプロダクトやサービスへ組み込み、経営価値へ転換するかが、企業にとって大きな経営課題となっている。こうした環境の中で、今あらためて注目されているのが、ユーザーが製品やサービスを利用する際に感じる一連の体験を指す「ユーザーエクスペリエンス(UX)」である。
消費者の評価軸は、もはや機能や価格だけではない。「使いやすい」「ストレスなく操作できる」といった体験そのものが、企業の製品・サービスに対する評価を大きく左右する。直感的に操作できるサービスは利用負荷を下げ、スムーズに目的が達成できる環境は、ユーザーがそのサービスを“選び続ける理由”になる。結果として、解約率の抑制や利用継続率の向上、ブランドへの信頼醸成など、ビジネスの基盤を支える価値につながっていく。
また、近年のAIの進化により、UX向上のアプローチも大きく広がっている。
「AIを活用すれば、ユーザーの行動データを自動解析し、どこで迷い、どこで離脱し、何が操作や判断を後押ししているのかをリアルタイムで把握できます。さらに生成AIによってUXを個別最適化することで、これまで人の力では難しかった“一人ひとりに合わせた体験”も、低コストで提供できるようになりました」(シリル氏)
AI時代において、UXは単なる「デザイン上の工夫」ではなく、継続的に企業価値を生む「ビジネスモデルの一部」になりつつある。UXを強化する企業ほど、顧客維持、オペレーション効率化、競争優位の確立において着実に差をつけ始めている。
「どれだけAIが進化しても、実際に使うのは人間です。だからこそ、体験価値をどう高めるかが重要になります。私たちも“より良い体験を生むテクノロジー”にこだわり続けています」(シリル氏)
UXは人とテクノロジーをつなぐ架け橋だ。その重要性が、今後さらに高まっていく中、これらをオーケストレーションできる専門家が必要になってくる。
Associate Partner, Uvance Wayfinders
技術を基盤に、社会に価値を届ける
シリル氏が所属するWayfindersのエクスペリエンスチームは、UX設計から開発・デリバリーまでを一気通貫で担う実装志向のチームだ。技術価値を“体験”としてグローバルに実装する体制が整えられている。シリル氏自身も、南インド出身のデザイナー兼エンジニアとして、日本で18年以上のキャリアを築いてきた。
「『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく』という富士通のパーパスは、私自身のキャリアビジョンと深く共鳴しています。クリエイティブとテクノロジーの双方に根ざした専門性を活かし、単なる技術提供にとどまらず、人々の生活を本質的に向上させるユーザー中心の体験づくりに貢献したいと考えています」(シリル氏)
こうした想いを実現するための“基盤”がWayfindersにはあると、シリル氏は語る。
「一般的なコンサルティングファームの強みは“人の脳”、いわゆる人的ケイパビリティです。しかしWayfindersの強みは、富士通が長年にわたり積み上げてきたテクノロジー基盤にあります。そのため、戦略立案だけでなく、それを実現するシステムの設計・実装・デリバリー(体験価値の提供)まで、お客様と協働しながら並走することができる。良いものを世界に届けられる環境が整っていると感じています」
多様な技術を“実用的な価値”へと変換する際には、顧客に寄り添ったUXの視点が非常に重要となる。
「導入して終わりにならないよう、1年後、2年後、5年後の社会の姿や、システムの運用状況を見据えて設計しています。変化の早い時代だからこそ、お客様の立場に立ち、未来に残る開発を意識しています」(シリル氏)
現在シリル氏は、複数のAIエージェント・プラットフォーム開発も進めている。
「富士通には本当に面白いテクノロジーがあり、素晴らしいエンジニアが沢山います。しかし、社会に価値を届けられなければ意味がありません。そのため、人の力だけではカバーしきれないプロダクトプランニングの領域を、補完できるようなAIエージェント・プラットフォームを作りたいと考えています。現在は試作段階ですが、まずは社内で活用してもらい、将来的にはお客様向けにも提供することを視野に入れています」(シリル氏)
UXを共通言語に並走と可視化で合意形成を加速
企業が新たなプロダクトやサービスを開発するとき、大きな課題となるのが「関係者の頭の中にあるイメージをどれだけ正確に共有できるか」である。顧客が求めているイメージと、開発チームが持つイメージの間にギャップがあると、開発の手戻りが増え、スピードも大きく損なわれる。
Wayfindersのエクスペリエンスチームは、こうした状況を根本から変革するアプローチを実践している。
まず重視しているのが、クライアントと同じ目線で開発を進める「並走」だ。
単に要件や仕様を受け取って形にするのではなく、ゴールやユーザー像、既存の課題などの基本要素を丁寧に整理し、共通の方向性を持って進む土台をつくる。これにより、クライアントが抱きやすい“不安”や“暗黙の前提”を早期に拾い上げ、認識のズレを最小限に抑える。結果として、関係者全員が迷わず前に進める状態が保たれる。
「顧客の話を聞いてすぐにアーキテクチャやソースを作ろうとせず、もう1歩進んでよく議論し、理想的なUXをまずデザインすべきです」(シリル氏)
もうひとつの特徴が、スピード感のある開発スタイルだ。シリル氏は商談に向かう際、自ら作りこんだモックアップを携えて訪問する。
「一般的なコンサルタントはPoC(概念実証)に時間をかけますが、私は最初にモックアップを作ります。実際に動くものを見せれば、技術に詳しくないお客様でも感想や意見を言いやすくなるからです」(シリル氏)
早い段階でモックアップを制作し、実物に近い状態を提示することで、関係者間の理解が一気に深まる。言葉だけでは抽象的になりがちな議論も、画面の配置や動きといった“体験”を見れば共通言語として機能し、合意形成が大幅に早まる。Wayfindersのエクスペリエンスチームは、この「UXを議論の共通言語にする手法」 を通じて、プロジェクト全体のスピードと品質を同時に引き上げている。
実際の取り組みとして、あるクライアントの案件では、分散していた情報を統合プラットフォームとして再設計した。ユーザーが必要な情報へ直感的にアクセスできるようになったことで、利用満足度が向上すると同時に、クライアントが保有する多様なアセットの価値を最大限に引き出す成果につながった。
「プラットフォームのユーザーは、年齢やデジタルリテラシー、利用環境もさまざまです。だからこそ、複数のユーザーペルソナを丁寧に描き、お客様との対話を重ねながら設計を進めています。そこで生まれたデザインを開発につなげ、さらにデリバリーまで責任を持つ。戦略や構想で終わらせず、End-to-Endで支援している点が私たちの特徴です。全体を俯瞰して考えなければ、本当に良い体験は生まれません。すべてを担うからこそ、エクスペリエンスの細部まで妥協せずにこだわり抜くことができるのです」(シリル氏)
Wayfindersの使命は、UXを通じて企業の可能性を最大化することだ。並走し、可視化し、合意形成を加速させるアプローチは、これからのプロダクト開発・サービス開発における、新たなスタンダードとなっていくだろう。
AIが拓く体験価値の未来─鍵を握るのはUX
これまでもUXは企業競争力の源泉となってきたが、AIの発達によってその重要性はさらに高まっている。生成AI、マルチモーダルモデル、行動データ解析などの技術は、ユーザーのニーズを「推測する段階」から「先回りして満たす段階」へと進化させ、体験価値を一段と高めつつある。
Wayfindersが重視しているのは、AIを導入することではなく、AIによって体験がどう変わるかを設計することだ。「AI時代においては、一日遅れることが大きなロスになります。変化のスピードは極めて高く、ひとつの成功体験に安住してしまうと、すぐに競争力を失いかねません」(シリル氏)
AIが日々進化し、新たな体験を支えるテクノロジーが次々に登場する時代だ。体験が古びてしまうことは、ブランド価値の低下を招く。だからこそ変化の波に遅れず、AIを前提にした顧客体験を継続的に進化させることが、企業の優位性を左右するカギとなる。
Wayfindersのエクスペリエンスチームは、この大きな変革期において積極的にAIを取り入れている。それは個人の効率化にとどまらず、人の知見をAIに移し、チームや組織で再利用可能にする試みでもある。
「これからは“1人でさまざまなことができる”というマルチスキルが重要になります。しかし実際には、同時に対応できるプロジェクトやお客様の数には限界があります。そこで、自分の代わりに仕事ができるAIエージェントをつくることで、1人でより多くの業務に対応できる環境を実現しています」(シリル氏)
AIは人間を代替する存在ではなく、人の力を拡張する存在だ。AIを活用し、ユーザーにとってより価値ある体験を生み出していくことこそ、Wayfindersが目指す未来である。
「AIを恐れるのではなく味方にして、次のレベルに進めばいい。その際、ただ導入するのではなく、AIによって作業がどう変わるのかという“エクスペリエンスの視点”を持つことが重要です。そうすることで、より良い環境や体験を生み出せると考えています。変化の波に乗りながら、お客様の成長を実現する並走者であり続けたいと思います」(シリル氏)
単に技術を導入するだけでは、価値ある体験は生まれない。テクノロジーを価値へと翻訳するUXの力があってこそ、人と技術をつなぐスムーズで心地よい体験が生まれる。Wayfindersは、優れたUXを通じて技術の可能性を最大化し、AI時代に求められる最適な体験を提供していく。
Tharayil Ciril
Associate Partner, Uvance Wayfinders
ワコム、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー、アクセンチュアを経て2025年より現職。より良い体験のためのイノベーションを牽引する大胆なアイデアを現実に変えることに情熱を注ぎ、人間中心設計のソリューションをデザインするクリエイティブ・イノベーター。グローバルなコンサルティング経験を通じて培った戦略、デザイン思考、AI、テクノロジーの専門性を生かし、変革を共創する。
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