世界のSDGs政策が後退しても、企業がサステナビリティ経営を止めてはいけない理由
Article | 2026年3月13日
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世界的にサステナビリティ政策が後退し、米国では企業のESG/DEI推進を規制する動きまであります。一方、日本は引き続きSDGsを推進する方針です。企業活動を通じて社会や環境へ「プラス影響」をもたらす“ネットポジティブ”の取り組みは、企業自身へもビジネスメリットをもたらします。日本企業は、今こそネットポジティブを追求し、国際的なビジネス競争力を高めるタイミングと言えます。
世界的にサステナビリティ政策が後退
2025年1月に米国で第2次トランプ政権が発足して以降、世界の気候変動対策/サステナビリティ政策が後退しています。米国で反ESG(環境・社会・ガバナンス)・反DEI(多様性・公平性・包摂性)の動きが顕在化し、企業が次々とサステナビリティやDEI推進プログラムを廃止しました。またEUも、米国の動きを受けてサステナビリティ開示やESG関連の規制緩和を図る方針に転換しました。「国連SDGsレポート2025」によれば、139のターゲットのうち「順調に進んでいる」のは18%にとどまり、特に気候・貧困の問題は後退しています。
日本は引き続きSDGs推進
一方、グローバルで気候変動対策が後退する中、日本政府は2025年2月、エネルギー安全保障と脱炭素・カーボンニュートラル推進を一体化した「第7次エネルギー基本計画」を打ち出し、新たに2040年度までに温室効果ガス73%削減(2013年度比)目標を掲げました。サステナビリティ政策についても、2025年7月のHLPF(持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム)において日本は引き続きSDGsの実現に貢献していくことを宣言、内閣総理大臣を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」での取り組みを継続しています。
また、日本経団連も、「世界のSDGsバックラッシュの動きに関わらず、企業はサステナビリティを成長機会と捉え、SDGs達成への貢献を通じて競争力を強化し、日本の経済成長と国民のウェルビーング向上につなげる」ことを基本的考え方としています。
今なおネットポジティブに取り組むべき理由
企業におけるSDGs達成への取り組み、気候変動対策、ESG/DEI推進は、企業活動がもたらす「マイナス影響」を減らすだけでなく、社会や環境に対して「プラス影響」をもたらします。このような、社会や環境に能動的に「ポジティブな価値」を創出しようとする概念を、「ネットポジティブ」と定義します。
このたび、Economist Impactが17カ国で事業を展開する5業界(金融、製造、運輸、小売、エネルギー・社会インフラ)のCxOおよび意思決定者層1800名を対象に、企業が“ネットポジティブ”にどのように取り組んでいるかを独自に調査しました。調査の結果と洞察は、「ネットポジティブインデックス調査レポート:エグゼクティブ・サマリー」で紹介しています。
調査によると、ネットポジティブの先駆的企業は、業界を問わず収益と市場シェアの目標達成見込みが高く、投資家の信頼を得る傾向がありました。企業がネットポジティブを追求することは、ビジネスと社会・環境の両面にメリットをもたらします。それは知られざる事実ではなく、調査の回答傾向をみると、企業役員/意思決定担当者の多くが、ビジネスに様々なメリットがあることを理解していることがわかります。具体的には、効率化による経費削減(67%)、気候変動リスクの軽減とレジリエンスの工場(67%)、規制コンプライアンス・リスク管理の強化(57%)などのビジネスメリットを期待しています。
現在の世界的なサステナビリティ政策の後退は、地域によっては企業のネットポジティブ推進の逆風にはなりますが、取り組みを止める理由にはなりません。企業には、ネットポジティブを追求する社会的責任があり、それは自社のビジネス成長にもつながります。特に、逆風の吹いていない日本企業は、今こそネットポジティブを追求し、ビジネス競争力を高めるタイミングと言えます。
羽野 三千世
Michiyo Hano
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 マーケティング戦略 コーポレートインサイト部
マネージャー
日経BP、ZDNet、ASCIIの編集記者、MSN Japanの編集責任者、日本マイクロソフトのSNSマーケティングリードを経て2023年10月富士通入社。
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