富士通が、ニッポンのエンジニアをもっと、クリエイティブにする 「生産性100倍」の衝撃。AIが“全工程”を無人化・自律化

富士通のAI戦略・ビジネス開発本部長の岡田英人氏と特定プロジェクト対策本部トップの國分出氏

Article | 2026年4月10日

この記事は約10分で読めます

2026年2月17日。富士通がシステム開発の歴史を塗り替える壮大な一歩を踏み出した。同社が発表した「AI-Driven Software Development Platform」は、大規模言語モデル「Takane」を核に、ソフトウエアの要件定義から設計、実装、結合テストにわたる“全工程”をAIエージェントが自律的に連携して実行する画期的なAIドリブン開発基盤だ。同社内の実践で示された「生産性100倍」という驚異的な数字は、決して単なる効率化を意味するものではない。エンジニアをより創造的な価値創造へと誘う「明るい未来」への招待状だ。業界の先駆者として、富士通がいかにして課題を克服し、システム開発の新地平を切り開こうとしているのか。その情熱と信頼の裏付けに迫る。

※本コンテンツは日経クロステックで掲載されたものを当社で許諾を得て公開しております。

AI

結局、これまでのAIによる開発では何も変わっていなかった?

日本企業のシステム開発は今、大きな転換点を迎えている。経済産業省委託事業による調査報告では、2030年にはIT人材不足が最大79万人規模になりうると予測※1される。“崖”が来るとされた2025年はとうに過ぎた。社会情勢はめまぐるしく変わる。その変化に即応できるスピーディーなシステム改修が競争力を左右する一方、改修に多大なコストやリソースを恒常的に消費する状況もある。ただでさえ、どこも人手が足りないのにだ。
※1 参照:「調査報告書 -IT人材需給に関する調査-」(2019年3月)

諸外国との差も開きかねない。情報処理推進機構(IPA)は「DX動向2025」で、日本・米国・ドイツの3か国比較分析を実施し、日本企業のDXの現在地と課題を浮き彫りにした。下図では、米独と比べDXを推進できる高度人材の確保に苦戦している状況が見て取れる。

日本・米国・ドイツのDX取組の不足感を年度別に比較。日本は「大幅に不足」が最多、米国は「過不足なし」が中心。
高度人材の不足感はIPA調査では米国、ドイツなど他国に比較して非常に高い
(出所:IPA「DX動向2025(データ集)」)

現場は複雑化する既存システムの保守と、変化するビジネス環境への即応という、二律背反の要求に晒されている。加えて特定個人の「暗黙知」や経験に依存した開発スタイルが、品質のばらつきや改修スピードの低下を招いている。

こうした中、多くの企業が生成AIをシステム開発に導入しつつある。エンジニアがAIと対話しながらコードを生成・修正するアプローチは、個々の開発作業の効率を大きく高めてきた。

しかし、その多くはあくまで「人とAIとの対話」を前提としたものであり、多くのプロセスで判断や工程間の調整に人が介在する構造にとどまっていた。人の介在が不可欠である以上、システムが大規模化・複雑化し、継続的な改修が求められる環境では、どうしてもスピードとスケールに限界が生じる。このような開発環境において、本当に問われているのは、開発タスクの効率化を超えて、開発プロセスそのものをどこまで自律化できるか、という点だった。

自動化・自律化したAIドリブン開発
「100倍」の生産性向上を実現する

2026年2月17日、富士通は「システム開発を変革するAIドリブン開発基盤についての説明会」と題する説明会を実施。内容は驚くべきものだった。発表された「AI-Driven Software Development Platform」は、AIとの「対話」からすらもエンジニアを解放。自律的に動くAIによるノンストップの開発を実現する。ソフトウエアの要件定義から設計、実装、結合テストまで、開発の各工程を複数のAIエージェントが協調して実行。人が介することなく、“全工程”をAIで自動化・自律化するというのだ。

人とAIの対話型開発から、複数AIが連携し自律的に進めるノンストップ開発への進化を示す図。
富士通の新・AIドリブン開発基盤「AI-Driven Software Development Platform」

富士通AI戦略・ビジネス開発本部長の岡田英人氏は、説明会の中で熱を込めて言う。「業界で今、本当に問われているのは、長年使われてきた複雑で巨大な既存システムをAIがいかに理解し、開発プロセス全体を変革できるか」。富士通が目指すのは、自社だけではなく業界全体の生産性向上と、新しいシステム開発のあり方の確立。要件定義から結合テストまで一気通貫に自動化するAI-Driven Software Development Platformは、まさに現状を打破し、日本企業の強力なパートナーとなるものだ。

富士通Japan特定プロジェクト対策本部長の國分出氏は、説明会でさらに踏み込んだ実例を取り上げる。ヘルスケア領域を対象にした同社内の実践にて、「3人月を要していた作業が、わずか4時間で完了した」という。これは実に「100倍」の生産性向上を意味する。

「100倍」という驚異的な成果を支えるものは3つ。1つ目は、富士通研究所が蓄積してきたAI関連の高度技術。2つ目は、富士通がCohere社と共同開発した大規模言語モデル(LLM)である「Takane」だ。日本語言語理解ベンチマークJGLUEにおいて世界最高記録※2を達成。グローバルで富士通が独占的に提供できるモデルとなっている。日本語能力に優れ、特に言葉の間違いが大きな問題や損害を及ぼしうる行政や金融、医療、法曹などの分野でも極めて重宝し、これがAI-Driven Software Development Platformにも存分に生かされている。

制度・法令の変更が多い医療・自治体はもちろん、事業環境の変化に合わせて、まさに「変わり続けるシステム」を持つすべての企業の変革を促進する、新たな開発基盤といえよう。

この変革で実現するのは「タイム・トゥ・マーケット(TTM)」の劇的な短縮だ。市場環境や制度変更が激しい現代、改修コストにリソースを浪費するのではなく、新たなサービスの提供へ即座にリソースを振り向けられるようになる。「変わり続けるシステム」を持つことが、もはや負担ではなく、攻めの武器へと変わっていく。
※2 GLUEにおいて、クラウドサービスで提供される大規模な汎用LLMを含む他社のLLMの結果を凌駕。なお、JNLIとJCoLAについては正解データ(Ground Truth)に不確かさがあったため、複数人のアノテーターにより正解データを修正して測定した参考値(2024年9月富士通とCohereによる測定)。

業界の新たなスタンダードへ
富士通が切り開く新たな地平

そして3つ目は、富士通の現場エンジニアが積み上げてきた実践知・暗黙知を核としていることにある。

名店のラーメンが、オーダーから短時間でなぜ、あの味を提供できるのか。それは事前に何時間もかけて、「仕込み」を行っているから。「AIが4時間で調理を終えられるのは、その前にシステム資産やドメイン知識をAIが理解できる形に整える『仕込み』があるからだ」(岡田氏)。この「仕込み」こそが、長年の開発経験を持つ富士通ならではの「実践知・暗黙知」であり、容易に他社が模倣できない競争力の源泉となっている。

エンジニアは今後、この「仕込み」の設計や、AIが導き出した成果を顧客価値につなげる高度なコンサルティングへと役割を移していくだろう。富士通は今や、エンジニアのあり方そのものも再定義しようとしている。AIに仕事を奪われるという悲観的な未来ではない。むしろ富士通が描くのは、ビジネスの現場に入り込み、課題の特定からデータ活用・実装までを一貫して担い顧客と共に価値を創出する「Forward Deployed Engineer(FDE)」などといった、よりクリエイティブな新しい専門領域へとシフトするという「明るい未来」だ。

富士通は2026年1月から、診療報酬改定に伴うソフトウエア改修への適用を皮切りに、2026年度中には金融、通信、製造など幅広い分野へと適用範囲を拡大する計画だ。「この技術はゴールではなく、スタート地点。世界中の開発プロセスを変革したい」と岡田氏が語るように、同社はAI-Driven Software Development Platformを業界のオープンなスタンダードに育て上げようとしている。

従来の「人月モデル」から、AIと人間が真に共創する、新しい高付加価値モデルへ。富士通が切り開く地平は、日本のシステム開発の風景を塗り替え、よりクリエイティブなものへと昇華し、世界に通用する新たな成功モデルとなる可能性を大きく秘める。巨大組織ながら自らの変革へ歩みを止めない富士通の挑戦に、今、大きな期待が集まっている。

関連コンテンツ

大規模言語モデル「Takane」を活用し、ソフトウェアの要件定義から設計、実装、結合テストに渡る全工程をAIエージェントが協調し実行するAIドリブン開発基盤を開発し、運用開始

当社は、システム開発の在り方をAIドリブンへと変革し、お客様および社会の持続可能な発展に貢献するため、ソフトウェアの要件定義から設計、実装、結合テストに渡る全工程をAIで自動化する開発基盤としてAI-Driven Software Development Platformを開発しました。
紫色の風景の中、カラフルな光の扉の前に立つ女性。

システム開発の「常識」を過去にする。 ―富士通のAIが導く「SI変革」と“爆速”生産性―

富士通のAI技術がシステム開発の常識を刷新。複雑な改修を完全自動化し、約100倍の生産性を実現しました。AI時代の新開発モデルがビジネスの新地平を拓きます。
富士通のAI戦略・ビジネス開発本部長の岡田英人氏と特定プロジェクト対策本部トップの國分出氏