法務省×富士通 持続可能な社会へ 所有者不明土地問題解決に向けDXを推進

法務省と富士通が描く持続可能な日本の未来について議論する人たち

2023年7月11日

日本が抱えている所有者不明土地問題。今や、所有者不明土地は九州全土の面積を上回ると言われています。所有者不明土地をこれ以上増やさないために、関連する改正法が今年4月から段階的に施行されています。そのなかで、登記情報システムについてもモダナイゼーションに取り組み始めておりDX化を推進しています。法務省と富士通が描く持続可能な日本の未来とは、一体どのようなものなのでしょうか。法務省と富士通の担当者に話を聞きました。

社会課題:所有者不明土地とは

――法務省民事局の業務概要と民事第二課のミッションをお聞かせください。

藤田氏:民事局は、法務省の内部部局の一つとして、登記、戸籍・国籍、供託等の民事行政事務の企画・立案を行っています。その中で民事第二課は、主に不動産登記制度に関する業務を担っています。

法務省 民事局民事第二課長 藤田 正人氏
法務省 民事局民事第二課長 藤田 正人氏

――不動産登記とは、どういったものでしょうか。

藤田氏:不動産登記とは、私たちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などについて、民法や不動産登記法に精通した登記官(法務局職員)が、利用者の申請書類を審査して登記簿に記録し、一般公開する制度です。不動産登記の内容を証明した登記事項証明書は、手数料を納めて請求すれば、誰でも取得できます。

――日本全国で所有者不明の土地が増え、社会問題になっているそうですね。

藤田氏:所有者不明土地は、政府全体で取り組んでいる非常に重要な課題の一つです。所有者不明土地とは、登記簿を見ても、現在の所有者が直ちに判明しない土地、所有者が分かっても、その所在が分からない土地のことです。所有者不明土地は、土地の相続の際に登記の名義変更(相続登記)が行われていないこと、所有者が転居したときの住所変更(住所等の変更登記)が行われていないことが原因で発生しています。
2018年の民間団体の調査結果によれば、九州本土の面積を大きく上回る面積の土地が、所有者不明土地になっていると報告されており、最近では、都市部でも増えています。この問題は、高齢化が進み死亡者数が増えたり、都市部への人口集中が加速したりすることで、更に深刻化していくと考えられます。

――今後、所有者不明土地が増えると、どのような問題が発生するのでしょうか。

藤田氏:所有者が分からない状態が続くと、土地が管理されずに放置されてしまい、景観や治安に悪影響を及ぼす恐れがあります。また、土砂崩れなどの災害対策の工事が必要な場所であっても、所有者の承諾を得られないために工事を進められず、危険な状態を回避できません。さらに、民間企業が土地を活用して事業や開発を行う際にも、その地区内の土地の所有者が把握できなければ、計画の進行の妨げとなってしまいます。

所有者不明土地の解消に向けた取り組み

――このような問題の解消に向けた現在の取り組みについて教えてください。

藤田氏:所有者不明土地の「発生予防」と「土地利用の円滑化」の2つの観点から、民事基本法制を総合的に見直し、令和3年に「民法等の一部を改正する法律」および「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
このうち「不動産登記制度」の見直しとして、来年(令和6年)4月に「相続登記の申請義務化」が始まります。
来年4月からは、相続により土地や建物を取得した場合に、それを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが法律上の義務になります。正当な理由なく義務を怠った場合には、10万円以下の過料の対象になります。
また、来年4月より前に相続した不動産も、未登記の場合は、義務化の対象になりますので注意が必要です。ただし、この場合、義務を履行するための3年間の猶予があります。

相続登記義務化周知ポスター(出典:法務省ホームページ)
相続登記義務化周知ポスター
(出典:法務省ホームページ)
相続登記義務化周知フライヤー(出典:法務省ホームページ)
相続登記義務化周知フライヤー
(出典:法務省ホームページ)

――所有者不明土地問題の解消に向け、今後の取り組みも教えて下さい。

藤田氏:段階的に新制度が施行されます。来年4月に「相続登記の申請義務化」が施行された後、令和8年4月までに、「住所等変更登記の申請の義務化」が施行されるほか、「所有不動産記録証明制度」などが施行されます。
また、制度の施行だけでなく、利用者にスムーズに登記申請を行っていただけるようインフラ整備も進めたいと考えています。登記情報をしっかり管理する登記情報システムも新制度などに柔軟に対応できるよう継続した更新を進めていかなければいけません。

登記情報システムを法務省と富士通でDX化

――富士通は所有者不明土地問題をどのように捉えていますか。

下村:富士通としては、法務省の取り組む持続可能な社会の実現をDX/SX(注1)起点で支援したいと思っています。土地・不動産は人々の生活、経済の基盤であり、限られた資源です。相続登記の申請義務化による登記情報の最新化や所有者不明土地の解消は、社会に信頼をもたらすとともに持続可能な社会の実現に向けて非常に重要だと考えています。
そのような社会の実現に向けて、登記情報システムを未来に繋げるためにも、法務省と連携しDX/SX化することが富士通の使命だと認識しています。

  • (注1)SX:サステナビリティ・トランスフォーメーション。企業がSDGs達成に向け、利益追求のみならず社会や企業のサステナビリティ(持続可能性)を重視した経営に転換し、中長期的に企業価値を向上させること
富士通株式会社 パブリック&ヘルスケア事業本部 官庁第三事業部 シニアディレクター 下村 大樹
富士通株式会社 パブリック&ヘルスケア事業本部 官庁第三事業部 シニアディレクター 下村 大樹

――システムの観点から、所有者不明土地問題に対してどのような貢献ができると考えていますか。

阪本:登記の申請義務化において、利用者の負担を減らすことが大切だと考えています。例えば、住所等の変更では自治体の持つ情報と連携して登記情報に効率的に反映することによって、利用者の負担軽減に貢献できると思います。そういった効率化は、DX化することで実現可能です。

登記情報システムは、メインフレーム型のシステムから始まり、法務省と一緒にデジタル技術の進展に合わせて段階的に更新させています。
現在は、重要情報を扱うシステムとフロント業務を行うシステムをオンプレミスとクラウドで最適化し、利用者視点であるべき姿にするモダナイゼーションを進めています。また、運用効率と生産性/安全性を高め、新制度や自治体/利用者のタッチポイントへの柔軟な対応をすることにより、DX/SXに繋がるシステムにしたいと考えています。

登記情報システムの沿革と将来

――システムをモダナイゼーション、DX/SX化することで、利用者が期待できることはありますか。

藤田氏:政府の方針を踏まえて、オンクラウドで行政サービスを革新しようとしています。そのなかでハイブリッドITなどを活用しながらシステムをモダナイゼーションすることで、新たな取り組みにチャレンジにしていきたいと考えています。
そのため、システムの効率化や情報の連携を図り、登記の申請義務化に伴う手続の負担軽減に努めていきたいと考えています。このような取り組みを通じて、国民の皆様により受け入れられやすい環境を作っていきたいと思います。

持続可能な社会に向けて

――登記情報システムにおいて、利用者への価値向上に向けた展望をお聞かせください。

藤田氏:今回の新制度の施行に伴い、これまで登記申請を経験したことがない方々に手続をとっていただくことになります。初めて登記を申請する利用者や登記の事務処理を行う職員にとって利用しやすく正確で迅速に処理されるようシステムの向上を図っていきたいと考えています。そのため、専門家の意見や民間の知見も大いに参考にさせていただきたいと思います。

阪本:私たちは、プッシュ型の情報提供を充実させるような提案をしていきたいと考えています。行政間の連携をさらに強化し、他の行政手続で発生した変動情報が、関連する行政手続にも反映されるような仕組みがあると、各種手続の申請漏れを減らすことができるでしょう。

また、更なる行政手続のワンストップ化も重要と考えています。例えば、相続登記の際に戸籍謄本を取得する必要がありますが、将来的には戸籍情報とも十分に連携することで、添付書類を省略でき、手続の簡素化に貢献できると思います。

富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ本部 P&S ITS Division マネージャー 阪本 梨紗子
富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ本部 P&S ITS Division マネージャー 阪本 梨紗子

――法務省は今後、富士通にどのようなことを期待していますか。

藤田氏:不動産登記制度は国民一人ひとりの大切な財産や権利に関わる非常に重要なものですが、デジタル化の進歩に伴って利用者が求める水準が上がっていくと思います。そのような状況を踏まえつつ、改善・向上に向けてその知見に基づくご提案などをいただければありがたいです。

――両者の協力によって、どのような未来を望まれていますか。

下村:今後も利用者中心、デジタル完結のサービス充実に向けて、貢献したいと思っています。さらに将来的には、当社のテクノロジーとエンジニアリング力を活用して、AIによるサービス充実も提案していきたいと考えています。

藤田氏:所有者不明土地問題などさまざまな社会課題に対する意識を共有しながら、次々と進む民間のアイデアや技術とも連携しつつ、持続可能な社会に向けて取り組んでいきたいと思います。

やはり、制度だけではできないこと、システムだけではできないことがあります。ただ、それらが組み合わさることで1+1以上の効果が期待できます。今後、そういった相乗効果を生み出すためにも、様々な取り組みを進めていきたいですね。

画面下 法務省 民事局民事第二課 藤田課長(中央)、所有者不明土地等対策推進室 山本室長(右)、光木係長(左)画面中央ぬいぐるみ 不動産登記推進イメージキャラクター トウキツネ 画面上(左から) 富士通株式会社 シニアディレクター 下村、マネージャー 阪本、マネージャー 中森、事業部長 守屋
画面下 法務省 民事局民事第二課 藤田課長(中央)、所有者不明土地等対策推進室 山本室長(右)、光木係長(左)
画面中央ぬいぐるみ 不動産登記推進イメージキャラクター トウキツネ
画面上(左から) 富士通株式会社 シニアディレクター 下村、マネージャー 阪本、マネージャー 中森、事業部長 守屋

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