異業種の“非常識”が、問いを強くする──共創の場「FUJI HACK」から見る新規事業創出のヒント
2026年3月24日
複雑化する社会課題や事業環境の変化を前に、自社だけで解ける問いは、もはや多くないのかもしれません。業界の垣根を越えた「共創」が次なる一手であると理解しながらも、具体的にどのように一歩を踏み出せばよいのか──。多くの企業が、その答えを探し続けています。
富士通が継続的に取り組む企業横断のクリエイティブソン「FUJI HACK」は、参加者が短期間で問いを磨き、仮説を形にしていく実践の場として運営されてきました。共創は、正解を持ち寄るというより、解くべき課題をどう定義するか(=問いを立てるため)のプロセスです。
本記事では、共創の場で何が起きているのか、そしてどのような設計が学びにつながるのかを、事例とともに紹介します。
なぜ今「共創」なのか──イノベーションを生む“出会い”の設計
「新しいイノベーションは、いつもと違う発想からしか生まれない。しかし、その“いつもと違う発想”を組織の中から生み出し続けるのは、本当に難しい。」
多くの企業が抱えるこの普遍的なジレンマを乗り越えるための一手として、FUJI HACKは共創の場として発展し、2025年度は257社636名の方々にご参加いただきました。
FUJI HACKでは、「自分にとっての非常識に触れることから、新しいイノベーションは生まれる。参加者同士が気負わずに出会えて、誰しもが創造性を発揮出来る場にしたい」という想いから、参加するにあたってプログラミングスキルも、業界知識も問いません。営業、企画、総務、人事など様々な職種の大手企業の担当者が、それぞれの専門知識や課題意識を持ってこの場に集結します。
多様なバックグラウンドを持つ人同士が議論する中で、当たり前だと思っていた前提が覆され、思考の枠が心地よく壊されていく。そのプロセスにこそ、新たな価値の種が眠っています。この取り組みは、挑戦するカルチャーの醸成を目指す、富士通自身の変革活動の一環でもあります。まずは自らが多様な知性を受け入れ、繋ぐハブとなることで、社会全体のイノベーションを加速させていきたい。そんな想いが、この「場」には込められています。
「場」は、単発ではなく“継続”で効いてくる──年1回から毎月へ
FUJI HACKは、これまで年1回程度の大規模開催が中心でしたが、今年度はほぼ毎月開催される継続的なイベントに変化。一度きりの盛り上がりで終わらせず、試行錯誤のサイクルを回し続けて、挑戦の回数を重ねることこそが学びにつながります。その開催形式は、お客様の多様なニーズに応えるため、主に3つの型に進化しています。
-
共通テーマ型
「AI」や「デジタルツイン」といった共通のテーマを設定し、業界を問わず広く参加者を募るスタイル。未来のトレンドに触れ、普段は出会えない異業種の方々と議論することで、新しい事業のヒントやインスピレーションを得ることを目的としています。 -
課題提供型(オープン)
企業や地域が持つ壮大な構想やビジョンを元に、制約なく自由なアイデアを考えるスタイル。例えば「未来の都市体験をどうつくるか?」というような未来の構想を深掘りするため、多様な分野から熱意あるメンバーを集います。一つの正解を探すのではなく、構想を具体化する中で無数のヒントを得たり、共に実現を目指す仲間を見つけ出したりすることがゴールです。 -
課題提供型(セミクローズド)
特定の企業が、社内だけでは解決が難しい具体的な事業課題を持ち込むスタイルです。富士通がハブとなり、その課題解決に貢献できそうな、しかし普段は接点のない異業種の企業を招待。クローズドな環境で集中的に議論することで、常識を打ち破る、非連続なアイデアの創出を目指します。
AI回で見えた「共創の質」──問いの深さが、熱量をつくる
2025年秋に「ビジネス変革×AI AIと共に人に寄り添うデジタル社会を創造しよう!」というテーマで実施した回では、44社74名 が参加。未来洞察に関してのキーノートや、Microsoft、GoogleによるAI実践関してのインプットトーク、そして日清HDのCIOや第一線で活躍するVCをはじめとする多様な審査員の視点が加わることで、議論の解像度が一段上がりました。
「不登校児の心のサインをAIで検知する教育システム」や「美容院をウェルネス拠点に変えるヘルスケアサービス」など、参加者の強い原体験に根差した質の高いアイデアが生まれた一方、講評では審査員からアイデアの新規性だけでなく、“問いの立て方”が繰り返し論点になりました。
「皆さんのアイデアは素晴らしい。しかし、あえて問いたい。その問いは、小さくないか?今できるAIを前提にするのではなく、もっと未来を見据えた、ある意味無謀とも思える挑戦があってもいいのでは。」
審査員を務めた富士通執行役員専務の福田譲は、参加者への賛辞とともに、本質を問うフィードバックを投げかけることで、この場が単なる交流イベントではなく、未来社会を担う挑戦者たちが本気で切磋琢磨する真剣な議論の場であることを、はっきりと示していました。
共創の場から持ち帰れること──「問い」「打席」「よい失敗」
FUJI HACKから見えてくる学びは、特定のイベントに限らず、各社のオープンイノベーション活動にも応用できるのではないでしょうか。ポイントは大きく3つです。
「自分に直接関係ないテーマでも、思考の刺激になる。新しい常識に触れる機会が増えるほど、挑戦が日常になっていく」
- 問いを大きく設計する:解像度の高い現場情報と、未来を見据えた視点の両方を入れる
- 打席を増やす:単発ではなく、継続的に試行錯誤できる機会をつくる
- “よい失敗”を許容する:短期間で形にし、フィードバックで学びを残す
この記事では、富士通がお客様と取り組む共創の場の一端をご紹介しました。共創は、正解を持ち寄るというより、問いを一段強くするためのプロセスです。また、自社で持つ事業課題こそが、業界の壁を越えた仲間と未来を拓くための“最高のテーマ”なのかもしれません。
関連情報
編集部おすすめ!
Transformation Now in 東海で見えた成功のヒントと共創の価値
「データドリブンSCMリーダー養成塾」 仲間を増やして学びを育てる 本業に生まれた“ちょっといい影響“
信頼関係づくりと情熱スイッチで企業変革に伴走する「データドリブンSCMリーダー養成塾」
この記事を書いたのは
富士通株式会社 Fujitsu Innovation Circuit事務局
私たちは、「挑戦が当たり前の富士通」を掲げて2021年11月より開始したイントラプレナーの育成と新規事業の創出を目指すプログラム「Fujitsu Innovation Circuit」の運営を行っています。
企業横断イベント「FUJI HACK」の他、新規事業創出スキル獲得に向けた各種セミナー、ワークショップ開催しています。
編集部おすすめ!
Transformation Now in 東海で見えた成功のヒントと共創の価値
「データドリブンSCMリーダー養成塾」 仲間を増やして学びを育てる 本業に生まれた“ちょっといい影響“
信頼関係づくりと情熱スイッチで企業変革に伴走する「データドリブンSCMリーダー養成塾」
類似記事を探す
Transformation Now in 東海で見えた成功のヒントと共創の価値
最先端研究施設で産学連携の成果を体感し、多様な研究者と議論して得られた「気づき」とは?
学術を探求するアカデミアや博士人材と富士通はどう向き合うか?~SRLパネルディスカッションで大学と富士通が白熱の議論~