CSR企業間連携でSDGs達成へ 富士通×PwC「CSR担当者Meetup」レポート

富士通とPwCJapanの担当者4名の集合写真

2025年6月17日

SDGsの達成期限が迫る中、社会課題はますます複雑化しています。そのため、企業規模や業種を超えた協力体制が、課題解決に不可欠となっています。2025年3月、富士通とPwC Japanグループは、企業のCSR・サステナビリティ担当者を集めた「CSR担当者Meetup」を開催しました。これは、企業間連携の重要性を認識し、その可能性を追求するための試みです。業種の異なる70名以上の参加者がそれぞれの知見や経験を共有し、連携を促進することで、より大きなソーシャルインパクトを生み出すことを目指しました。本記事では、両社の企画担当者にお話しを伺うとともに、イベントの内容もご紹介します。

(表紙左から)
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 渡辺 恵利花
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 長島 瑠美
PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト マネージャー 鈴木 真樹氏
PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト シニアマネージャー 田中 和子氏

「CSR担当者Meetup」共催の背景と、両社の想い

多くの企業がサステナビリティ経営に取り組む現在、社会と企業の接点となるCSR推進部門の役割と重要性が増しています。ビジネスと社会貢献の両輪で根本的な社会課題解決を目指すため、さまざまなステークホルダーとの連携が期待されています。しかし、課題や悩みも多岐にわたり複雑化していることも事実です。今回、富士通とPwC Japanグループが共同で「CSR担当者Meetup」を開催した背景には、両社がこのような共通認識を持っていたからでした。

――今回、PwC Japanグループと富士通が、イベントを共催した背景について、教えていただけますでしょうか?

富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 長島 瑠美
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 長島 瑠美

長島: 社会課題解決への貢献は、富士通のパーパスの実現に向けた重要な柱の一つです。当部ではコミュニティ活動(注1)を推進していますが、自社のリソースやアイデアだけでは活動の範囲が限られてしまい、視野が狭まってしまっているという課題感がありました。そんな折、何度かイベントでご一緒しているPwC様と共通の課題を持っていたことが明らかになり意気投合。まさに「共感」から生まれたのが本イベントです。

PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト マネージャー 鈴木 真樹氏
PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト マネージャー 鈴木 真樹氏

鈴木氏: きっかけは、富士通様からCSR担当者が抱えている課題や悩みを共有したり、情報交換ができる、緩く繋がれるコミュニティ作りを推進したい。まずはそのきっかけとなるイベントを実施したいとお声がけいただいたことです。私自身も、他社のCSR担当者の方々とお話しする中で、自社のみによる社会課題解決には限界があるという課題感を持っており、そういった「場」の必要性を感じていました。

――それぞれの企業に対する印象はいかがでしたか?

富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 渡辺 恵利花
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 渡辺 恵利花

渡辺: PwC様は、サステナビリティに関する深い専門知識と、多様な企業やNPOとのネットワークをお持ちです。PwC様の持つ発信力とブランド力によって、より多くの方にこのイベントを知っていただき、共感の輪を広げたいという思いがありました。企業間連携では、お互いの社内制度やリソースとなかなか折り合いがつかないケースもありますが、鈴木様と田中様は社内外の調整事をしなやかに推進してくださり、非常に心強く思っていました。

鈴木氏: 実は、富士通様のパーパスとPwCのパーパスが近しいことに親近感を感じていました。また、目指されている世界観にも個人的に共感する部分が多く、長島様・渡辺様の活動推進力と魅力的なお人柄にも惹かれて、私自身ワクワクしながら当日までの準備をご一緒させていただきました。

――今回のイベントには、どのような想いが込められていましたか?

PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト シニアマネージャー 田中 和子氏
PwC Japan 合同会社 マーケット部 ソーシャルインパクト シニアマネージャー 田中 和子氏

田中氏:デジタル化、AI化が急速に進む現代、ビジネス変革にはスピードと量が求められています。その一方で、企業が社会貢献活動を実施する意味も問われています。さらには、個社としての社会貢献活動を推進するだけでなく、社会全体として大切にすべきことを見失わないことも重要です。そこでさまざまな企業のCSRやサステナビリティご担当者様の想いを共有する場があると、進むべき道を確認し合えるのではないかと思いました。

渡辺:参加者の皆様には、自社の取り組みを改めて見つめ直し、新たな課題や解決策を発見するきっかけになればと考えていました。また同じ職種の方と繋がる機会自体がこれまであまりなかったので、共に社会課題解決に向けて進んでいく「仲間」としての一体感を感じられればよいなと思っていました。

オープニングトークから見えた、社会課題解決のヒント

イベント当日は、37社から74名が参加。オープニングトークでは、富士通グローバルソリューション ビジネスグループ Strategy & Transformation本部長, SVPの藤井剛、PwC Japan有限責任監査法人 パートナー 上席執行役員 地域共創推進室長の辻信行氏が登壇し、「企業が社会課題解決のためにできること」をテーマに議論を交わしました。モデレーターは、PwCコンサルティング合同会社 ディレクター ソーシャル・インパクト・イニシアチブ リードの下條美智子氏が務めました。

3名の登壇者によるディスカッションを、数十名の聴衆が聞いている様子
オープニングセッションの様子

議論の中で、藤井は『社会課題解決に取り組む上で重要な要素』として「割り切りと突き抜け」を挙げました。「社会課題解決を組み入れて事業創造を狙うのであれば、まずは割り切って必ず数字を創ることをゴールとする。ただし社会的価値は大きいがマネタイズできない活動は、最低限必要な予算を確保した上で、突き抜けるくらいにやる」と語りました。
一方、辻氏は「経済的指標だけで幸せが測れない時代において、会社が社会とどう向き合うべきなのかを整理しないと、人材の確保も難しくなり、事業も成立しにくくなる。BtoC企業は、株主=消費者=従業員だったりもするので、自社のファンをどう作るかという観点で社会貢献活動を捉える必要がある」と述べました。

また、『企業が社会課題に取り組む際の障壁』について、辻氏は「合理性」を挙げ、「社会課題解決に取り組むべき理由について世間からの理解を期待せず、やってみるのも一案」と提案。藤井は「組織としての合理性と、個人としての合理性という別のレイヤーを両方推進する」ことの重要性を語りました。さらに藤井は「以前はよく、コミュニティは第五の経営資源という話をさまざまな経営者としていたことがある。緩い活動で繋がるコミュニティを、トップダウンで大事にする。そういうことをしないと、特に若い世代はもうついてこない時代になっている」とも語りました。

その後は川崎フロンターレ様とオリオンビール様による企業事例紹介を行い、参加者は社会貢献領域ごとのグループに分かれてディスカッションを行いました。
参加者からは「安心感と連帯感を得られた」「情報交換と相談の場になった」といった声が寄せられ、企業間の壁を超えた繋がりが生まれる貴重な機会となりました。

4~5名に分かれた参加者がそれぞれのテーブルで、付箋や用紙を用いながら、ディスカッションを行っている
分科会の様子

イベントを振り返っての学びと、今後の展望

――今回のイベントで、特に印象に残ったことは何ですか?
田中氏: 「合理性と非合理性」の話にとても納得しました。ビジネスは「合理性」でできているけれど、世の中すべて合理性だけでは語れないから、社会貢献活動は非合理を埋めていくことも必要だということ。まさに、私たちが取り組むべき課題の本質を突いていると感じました。

鈴木氏: 私は、オープニングトークで富士通の藤井さんがお話しした「コミュニティは第五の経営資源」という言葉が、強く心に残っています。企業の競争力を高める無形価値として、共通の社会課題意識のもと集まる人たちのコミュニティの存在は、今後ますます重要な価値になっていくと改めて感じました。

――今後の展望として、何か具体的な連携のイメージはありますか?
長島: 多くの反響をいただいた今回のMeetupをきっかけに、企業間の連携がさらに加速していくことを期待しています。今後は、活動単位での情報交換や現場への相互参加を通じて、具体的なコラボレーションを創出していきたいと考えています。実は第2回Meetupの開催も決まっていて、そこではCSRのメディア戦略について取り上げる予定です。共通のテーマを持つ企業同士が連携することで、より大きなインパクトを生み出せると感じています。そして、その連携が、社会課題解決に取り組む人材の育成や、新たな協力関係の構築にも繋がると信じています。

4名の担当者が会議室で和やかに談笑している
担当者4名による対談の様子

関連情報

この記事を書いたのは

総務本部 コミュニティ推進室
コミュニティ推進室は、社会課題の解決に取り組むことで、社員一人ひとりの意識と組織の風土を前向きに変え、社会全体にポジティブなインパクトを与えることを目指しています。

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