信頼関係づくりと情熱スイッチで企業変革に伴走する「データドリブンSCMリーダー養成塾」
2026年3月3日
富士通は、組織変革を担う次世代リーダー向けの「データドリブンSCMリーダー養成塾(以下、リーダー養成塾)」を運営しています。本塾では、様々な課題を乗り越えてきた富士通の実践ストーリーをきっかけに、異業種の仲間との交流や体験を通じて、自分ごとへ醸成、変革に向けた具体的な提言作成まで伴走します。単なる学びの場に留まらない本塾について、プロジェクト責任者であるお二人に話を聞きました。
より深い信頼関係づくりから、共に考え変革を目指す場所
富士通では、2024年10月より、リーダー養成塾の運営を開始しています。各社から派遣された次世代リーダーの方々が共に学びあう場です。主に昨今変化の激しいSCM領域において、データドリブンの変革を推進していくために、富士通や先進企業の事例、失敗も含めた経験を題材としてご提供し、参加者同士の議論を経て気づきを思いに昇華させ、自社の変革提言を共に作り上げるプログラムです。
――リーダー養成塾はどういった場なのでしょうか?立ち上げようと考えた理由をお聞かせください。
宮田:2020年以降データドリブン・パーパスドリブン経営を実践する富士通では、経理財務、タレントマネジメント、事業管理、サプライチェーンなど様々な取り組みで得た実践知を個別にご紹介する場を提供してきました。これらをパッケージ化して提供しつつ、お客様と共に学び合う場を創ることができないかと考えました。同様に変革を目指すお客様に、富士通が経験した実践内容や、苦労した点、乗り越えた点などをご理解いただき、その内容を自社に参考にしていただく場を提供することは、富士通のひとつの価値だと思っています。
――塾生の参加条件「役員による指名者であること」について、もう少しお聞かせください。
宮田:「会社を変革していくこと」は、一人でできるわけでも、ひとつの部門に閉じた話でもない。全社横断で推進することの難易度を考え、役員自らもしくは、役員が指名する次世代のリーダー候補にご参加いただくことをお願いしています。
あらかじめ、社長や役員から「富士通の実践知をたたき台として、それが私たちの会社にどういうふうに活かせるのかレポートしなさい」という、明確なスポンサーシップがある状態が必要です。こうしたスポンサーシップがなく現場の担当者が一人でプログラムに参加されても、自社に戻ってから孤独な状態で戦わざるを得ず、結局何も起こらないです。
――次世代リーダーに向けて「富士通における変革の実態」を赤裸々に紹介するとお聞きしています。その意図をお聞かせください。
宮田:富士通が今の変革を進めた2020年、まず「フジトラ」(注1)として風土変革から着手し、変革を自分ごとと捉える社員を増やすことから始めました。さらにその風土変革をトップ自身が率先垂範するというトップファーストというアプローチを取りました。こうしたトップファーストとボトムアップの組み合わせは、欧米企業の変革推進手法と比べて、真逆ぐらい違うと思います。一般的にグローバルカンパニーでは誰から見ても納得できるよう透明性を重視し、ロジカルな議論がなされ、ビジョンと戦略がしっかりと数字に落とし込まれ、それを実行するオペレーティング構造が仕組みとして存在します。一方、日本企業では、「この人は信頼できる人、この人の言うことであればついていく」という人間同士の信頼のもと、様々な仕事が積み重なっていると思います。富士通はまさに、日本由来の企業特有の、いわゆる現場の人たちの絶妙な連携と一体感で事業を発展させて来ました。日本企業の変革へのパターンも様々ですが、いきなり欧米のやり方を取り入れてうまくいった企業はほとんどないですよね。
富士通という企業の変革実践ストーリーは、実践的な話としてご理解いただきやすいのではないかと思っています。
安東:直接お客様先に出向いてリーダー養成塾をご紹介する機会がありますが、役員の方々には、「富士通ではトップがDXのリーダーシップを発揮している」という事実に、非常に興味を持っていただいています。「やらねばならないよね」とおっしゃる役員の企業には、ご参加いただけていますね。
また、プログラムの中では、成功体験だけではなく、そこへ行く道筋を失敗も含め、かなり泥臭く紹介しています。実施後のアンケートでも、参加者のほぼ全員から、全体を通して非常に満足という回答を得られています。次世代リーダーの方々が今まさに直面している「こういうことをやりたいのだけれど、進まない」に対し、富士通が実際にどうやってきたのか、そのものに魅力に感じていただけていると思います。
- 注1:富士通が2020年から本格始動した全社DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト「Fujitsu Transformation」の略称。グローバルで標準化された業務プロセス・IT基盤の構築を目指す経営プロジェクト「OneFujitsu」の検討と同期して開始された。
自分ごと化につなぐ変容装置が組み込まれた参加者主体のプログラム
常に「参加いただく方々のために」を大切にしている本リーダー養成塾。2024年から始まった3か月のプログラムは4期が終わり、2026年2月から第5期が始まっています。
――リーダー養成塾を運営するにあたり、どういった点を大切にしていますか?
宮田:大きく三つあります。
一つめは、「真実のストーリーを紹介するだけ」ということです。決して、押し付けません。富士通が実践した取り組みが参考にならないことは差し引いていただき、もし真似できるところがあれば、自社の変革素案を作成する際の材料にしていただいて良いです、という意味です。
二つめは、「1/3ルール」です。本塾のオリジナルではありませんが、「講師から学ぶ」「仲間から学ぶ」「自分から学ぶ」という考え方です。講師から学ぶは当然として、共に参加する異業種も含めた受講生の受け止めやコメントからも学んでいただくことを推奨しています。さらに自社や自分の行動に落としていくために、「自社がなぜ変革が必要で、自分はどうありたいのか」といった内省の大切さを示しています。
三つめは、「売り込みをしない」です。「何が狙いでやっているのですか」と聞かれることもありますが、極力、製品名などは出さないようにしています。もちろん提案を求められれば行いますが、それはこの養成塾のスコープではありません。塾生の中で、自社にとってのWhy(なぜ必要か)とWhat(何が必要か)を問い、落とし込まれていくことが大事だと思っています。それなしに富士通からHowの話をいきなり提案してしまったら、安全安心な環境で共に学ぶという信頼関係が築けなくなります。
――回を重ねられていますが、どのような工夫をされていますか?
安東:プログラムは、当初から変わらず3部構成で計6回を1期としています。
基本的に宿題はないのですが、学びを自社に持ち帰っていただくために、最後の回に向けて、「自社に向けた提言の作成と発表」があります。ここの負荷がどうしても高くなります。塾生同士のコミュニケーションの機会をもっと増やしてほしいというご意見を受け、第4期からは折り返し地点となる3回目にグループディスカッション(ワークショップ)を設け、早い段階から最後の発表の準備にもなるようにしました。参加者同士の横のつながりの形成は、リーダー養成塾の一つの成果だと思います。
また、ディスカッションの内容は、社内デザインセンターの力を借りてグラフィックレコーディングを使い記録し、「残りやすいプログラム」に変えています。
また、富士通自体の変革もオンゴーイングでやっている強みを活かし、なるべく最新の情報をお伝えするようにしています。今後も、運営の様子やアンケートの声を参考に、プログラムの内容も変化させていきたいと考えています。
――塾生の方々の変革は、どういったポイントで起きていると感じられますか?
宮田:クラスルーム的なワークショップや座学での知識蓄積とは別に、フィールドトリップを組んでいます。これは、行動につなげる舞台装置ともいうべき仕掛けで、行先は福島県沿岸地域です。受講生の前に突如、社会課題だらけの景色が広がります。大震災、津波、原発という三重の災害が起こり、経済活動も止まりコミュニティも崩壊し、少子高齢化があっという間に出現した状況で、20年後の日本に降りたつ感覚に陥ります。「自分の会社が社会に対して、どう価値を提示できるか」を各自が自分ごとで考え始める瞬間です。一方でマイナスからゼロを、ゼロからプラスを産まんとする社会起業家、地域のリーダーとの対話を通じて、自らの心に何かが形成され始めます。塾の雰囲気も、福島に行く前後では変わります。そこまでに蓄えた知識や草案に、熱量が乗っかっていく有り様は、この塾の名物といえます。
安東:そうですね。10年経ってもまだ消化しきれない福島の現状の中で、自社や自身を再考する機会です。日常から逸脱した状態で、復興を目指すリーダーの方々がどういう生き方を選んだのか。考え方をお聞きしていると、そこに至るまでの過程が垣間見えてくる。自身の仕事のあり方や志に対して、「今、嘘偽りない状態ですか」と突きつけられる感じには「俺はもっとこういうのをやんなきゃいけないな」と使命感を持ったり、従来とは異なる目線で考え始めるようになる方が結構いらっしゃいます。眠っていたものを呼び覚まされるようなマインドチェンジが起こるのだと思います。私自身、何度も訪問していますが、事実を聞いているうちに「何か俺やってないんじゃないか」みたいなそわそわ感がめちゃめちゃ湧いてきます。向こうが仕掛けてくるわけではないですけどね。
継続していく先にあるもの
――体験をされた参加企業からはどのような評価がありますか?
安東:第3期から3回連続で参加されている企業様がいらっしゃいます。同じ方は参加できませんから、その企業では、塾生が3名いることになります。トップからの指名とはいえ、変革を起こす際に孤軍奮闘では、なかなか文化を醸成できないですが、「自分たちの会社の中に仲間づくりをしていくこと」、「その広がりをどうやっていくか」という共通的な視座を持ち、変革を推進する方々が参加者から出てきていると理解しています。そういった意味では、リーダー養成塾の解像度が上がり、参加者の理解がより深まっている、もしくは、切迫した課題になってきているという印象を受けます。
――多くのリーダーを見られてきたお立場から、「リーダーとは」どういった方だと思われますか?
安東:リーダー養成塾に参加される方は、「自分の悩みって間違ってなかったんだな」とか、「我々の方法論ってこうだったんだな」といった再確認をされる方が、結構いらっしゃいます。
リーダーになる方は、人よりいっぱい悩んでいて、学んでいて、目的のためにしっかり旗を振り、ついてこさせる人です。ついてこさせるためには、悩んだ量と学んだ量が絶対必要で、それが説得力になるのだと思います。
――最後に、リーダー養成塾が目指す未来について、お聞かせください。
宮田:一期あたり6人と仮定して1年に3回続ければ5年ほどで卒業生が100人になります。ここをコミュニティ化していきたいです。この養成塾以外にも、同じ目線で学ぶ様々な形のコミュニティがあれば、さらに繋げていきたいです。変革を志す人たちが「同じ目線」で「情報と情熱を交換する」コミュニティを作っていくことを、継続したいと考えています。
安東:同じく続けていくことですね。社内外に発信しながら続けていくと、どんどんリレーションが生まれてきます。養成塾で得た何かを糧にされた卒業生が、自社の中で大きく変革しましたといった実体験が出てくると、私自身も嬉しいです。そして、卒業生同士が期を超えて、業界業種を超えて連携する広がりが生まれると、日本全体が底上げされていくのではないでしょうか。そこに対して、初めてビジネスでいう、捲いた種が刈り取れるフェーズになってくると思います。様々な顧客を抱える富士通がハブ的な役割を担い、最初のステータスではビジネスを介さず、自発性を重んじていく。その先には自発的に共創ビジネスが生まれていく状態があることが望ましいと考えます。リーダー養成塾が、その起点になっていければ、一番嬉しいです。
リーダー養成塾の運営は、社内の有志メンバーで実行されています。富士通のことを、お客様のことを、もっと知りたい、共によりよく成長していきたい、という熱意で、通常業務を抱えながらも自主的に参加しているメンバーです。彼らの思いについては、別記事で紹介します。参加される塾生の雰囲気をさらに感じていただける内容です。ぜひご一読ください。
プロフィール
富士通株式会社 Uvance Customer Engagement本部
本部長 宮田 伸一
2024年5月より現職にてFujitsu Uvanceビジネスを担当。企業・業種横断による社会課題の解決を目指してソリューション開発と事業化を統率。前職(外資大手ソフトウェア)では顧客の業務・経営改革プロジェクトの立ち上げ支援、またクラウド事業統括として、営業部門とカスタマーサクセス部門の両方を統率。様々な業界における企業活動及び業務に関する幅広い視点と知見を保持。
富士通株式会社 Uvance Customer Engagement本部
シニアディレクター 安東 雄介
富士通へ入社後、スマートフォンの開発に従事。製品企画・開発・生産・販売を統括し、複数のフラグシップ機種を成功に導く。その後、共創ビジネスやIoT/AIを活用し、様々な業界でサービス事業立上げ、製造業向けプラットフォームのアライアンス構築にも注力。大手産業用機械メーカへの出向を経て、2021年に製造DXを推進・支援するための合弁会社の設立に貢献。代表取締役社長として、製造業向けクラウドサービスの構想策定から市場投入などに従事。2025年4月以降は富士通に戻り、業界・業種横断の社会課題解決を推進するプリセールスを担務。
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この記事を書いたのは
グローバルマーケティング本部 マーケティングCoEセンター CoE Japan部 Global Creative Services & Deal Support
商談獲得・ブランド価値向上に向け、戦略・目的に基づいたマーケティングキャンペーンのシナリオに沿って、取材・執筆から各種グラフィック制作物デザイン、動画撮影・編集を行っています。
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