プロフィール
Article|2025-12-23
「成長」と「楽しさ」が紡ぐ、未来への道
子どもの頃、「すごい人になりたい」と漠然と考えていました。小学生から高校生まで続けたサッカーでは、スキルの高い選手たちが楽しそうにプレーし、周囲から一目置かれている姿に強く惹かれました。当時の私は、単にサッカーが上手な人をすごいと思っていましたが、今思えば、彼らの「楽しむ姿」に憧れを抱いていたのだと思います。この経験から「継続した努力による上達が、さらなる楽しさに繋がる」ということが、私のキャリアにおける大切な価値観となりました。
サッカーに限らず、プログラミングにも興味を持っていました。元々はエンジニア志望でしたが、大学院での共同研究を通じて出会った研究員の方々が、私の進路を大きく変えるきっかけとなりました。彼らは高い専門性という「自分の武器」を持ち、それを最大限に活かして楽しそうに日々挑戦する姿に、強い憧れを抱きました。さらに、研究では実装スキルという視点だけでなく、学術という視点からも物事を捉え、より本質的な課題解決を楽しめる環境があります。これらの理由から、研究開発の世界で「成長」と「楽しさ」の好循環を実現したいと強く思いました。
人とロボットが協調し、共生する世界を目指して
私は現在、2025年4月に発足した空間ロボティクス研究センターに所属しています。当センターは、設置されたセンサーで空間全体をくまなく認識し、ロボットが人に危険を及ぼすことなく賢く振る舞える世界の実現を目指しています。その中で、私はロボットが人の生活空間で賢く行動するための「地図」の研究をしています。具体的には、「人がいつ、どこで、何をしたか」という行動履歴を地図に反映させる技術の開発です。
ロボットが現実の環境で行動する際には、周囲の状況を正しく理解することが大きな課題となります。例えば、「キッチンのコップを取ってきて」と指示された場合、ロボットは最短時間・最短ルートでタスクを遂行しようとします。その結果、もしそのルート上に子供がいたとしても、ロボットはタスクの達成を優先し、子供に衝突してしまう可能性があります。本技術を応用することで、子供がよくいる時間帯や場所の情報が行動履歴として地図に記録されるため、ロボットは「この時間帯はキッチンのこのルートを通らない方が良い」と判断できます。これにより、最短ルートではなく、安全性を考慮したルートを選択してコップを取りに行くことが可能になります。 将来的には、人とロボットがスムーズに協調し、例えば物流や介護など、人手不足が課題となっている現場でも、ロボットが安心安全かつ効率的に人をサポートできる、そんな便利な世の中の実現を目指しています。
本写真は、我々が開発した「空間World Model」技術のデモンストレーションです。空間に配置されたカメラとロボット搭載のカメラを統合して空間全体の未来を“想像”し、人が立ち入り禁止エリアへ侵入しようとする行動や意図を先読みします。事象発生後に検知する従来技術とは異なり、予測された未来に基づいて、先回りして複数ロボットを協調動作させる点が特徴です。詳しくは以下内容(*1)(*2)(*3)を合わせてご覧ください。
最先端の技術に常に触れ、点群処理分野の第一人者を目標に
私は、研究開発において二つの大きな目標を掲げています。
一つ目は、「点群処理」分野で第一人者となることです。点群処理とは、3次元空間や、そこに存在する様々な物体を含む環境全体の形状を、高密度な点の集合(点群データ)としてデジタル化し、解析・認識する技術です。私は、ロボットが収集した点群データから人の姿勢を推定し、その姿勢の連なりから人の行動を認識する技術の開発に取り組んでいます。これは、「人がいつ、どこで、何をしたか」という行動履歴の認識に活用することができます。点群データは、レーザー光を対象物へ照射し、反射光を測定することで、対象物までの距離や形状を計測したデータです。そのため、点群データは、カメラ画像と比べて個人のプライバシーに配慮されており、また暗所でも高精度な計測が可能なため、病室や介護施設などプライバシーに配慮すべき場所での見守り技術としても大きな可能性を秘めています。私はこの技術をさらに発展させ、人が活動するあらゆる空間で、人の安全をサポートするロボットが当たり前に存在する社会の実現に貢献したいと考えています。
二つ目の目標は、常に最先端技術をキャッチアップし、能力と心にゆとりのある研究員になることです。私の成長を促してくれた、ある先輩が将来のロールモデルとなっています。 その先輩は、研究スキル、コミュニケーション能力、そしてプライベート、その全てを高いレベルで両立させ、常に心にゆとりを持って、未熟な私をサポートしてくださいました。先輩に少しでも近づくために、日々多くのことを吸収したいという気持ちが今の私の原動力となっています。実は、入社前はロボットの実機を扱った経験が全くありませんでした。そこで、とにかく手を動かして学ぶしかないと考え、外部講義や開発セミナーに積極的に参加し、知識とスキルを身につけました。その結果、外部講座(*4)の最終課題において、講座で習ったロボット開発技術に加えて、MCP(Model Context Protocol)を応用して自然言語指示でロボットを動かすことで、創造性と技術力を発揮した点が評価され、優秀賞をいただきました。この経験を通じて招待制のコミュニティに参加する機会も得られ、短期間で多くの成長と新たな世界を経験することができました。
生成AI、今一番夢中になっている遊び
私の趣味はサッカー、バスケットボール、キャンプ、プログラミング、ガジェット、アニメ・漫画など多岐にわたりますが、最近最も熱中しているのは「生成AI」です。生成AIを活用することで、「もう一人の自分」もっと言えば「私よりも優秀なサポーター」を作り出すことができ、思考の壁打ちや情報収集が劇的に加速します。その結果、一人で取り組むよりも遥かに多くの時間を手に入れたのと同じ効果が生まれています。ロボット開発を始めたばかりの私が、開発を進めることができたのも、常に新しい技術動向を追いかけ、そこで得た知識やスキルを活用したからだと感じています。今は生成AIに夢中ですが、将来、次の技術トレンドが生まれても、常に最先端を追いかけ、新しい技術を習得していくこと自体を楽しみたいと思います。このように、新しい技術を学び、それを活用して成長することで、さらに楽しく、刺激的な挑戦ができる。私は、この「成長」と「楽しさ」の好循環を、これからも加速していきたいと考えています。
身体の構造とAI技術に精通したAI整体師(*5)の施術の様子です。彼の視点から、Physical AIにおける身体動作の設計について、非常に有意義な示唆とアドバイスをいただきました。
関係者からのメッセージ
野路さんは、新しい技術を捉えるアンテナが非常に高く、いつもチームに活気と新鮮な視点をもたらしてくれます。その優れた情報収集力は、変化の激しいAI分野で大きな強みです。また、現場でのロボット試験では地道な作業も厭わず真摯に取り組む姿勢がチームに厚い信頼と安心感を与えています。今後はその現場力と探求心に、未来を見通す深い洞察力を加え、Physical AIの分野で大きく羽ばたいてくれることを期待しています。(空間ロボティクス研究センター 姜山リサーチディレクター)
野路さんは、好奇心旺盛な若手研究者です。最先端技術のキャッチアップが極めて早く、その話題をいつも楽しそうに共有してくれて、学びと刺激を与えてくれます。一緒に参加している社内勉強会にも非常に意欲的で、野路さんのおかげで勉強会の内容の理解が深まったことが何度もあります。同期として、そして尊敬する研究者として、今後の活躍を心から楽しみにしています。(データ&セキュリティ研究所 渡邉祐太)
本稿中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものです