Fujitsu Tech Open House India 2025:世界の革新とインドの先進性が交わる場所

2025年12月5日

「Fujitsu Tech Open House India 2025」では、テクノロジーの最前線を切り拓く革新的な技術が数多く紹介され、インドにおけるイノベーションの可能性が存分に示されました。富士通のグローバルなイノベーション力と、インドの優れた人材エコシステムが出会うと何が生まれるのか——。その答えは、10月29日にバンガロールにある富士通の研究拠点にて示されました。そこでは、イノベーションが掛け合わさり、新たな可能性が生まれ、地域から世界へと広がる変化が始まっていました。

Fujitsu Research of India Private Limited(FRIPL)が主催したこのイベントでは、業界リーダーや学術関係者、イノベーションの先駆者たちが一堂に会し、共創とオープンイノベーションを通じてグローバル課題をどう解決していくかを議論しました。
基調講演や最先端技術のデモンストレーション、インドを代表するAI専門家によるパネルディスカッションを通じ、FRIPLが富士通のグローバル研究ネットワークの中で、技術革新を牽引する拠点であることを示しました。

インド発のサクセスストーリー:戦略のビジョンと成長の軌跡

FRIPLの歩みは、先を見据えた戦略的な視点と、現地の優れた人材への信頼が、いかに世界へ波及するインパクトを生み出すかを示しています。FRIPLのディレクターである豊田建がオープニングで語ったように、その始まりは2022年、インドに新たな研究拠点を立ち上げるという大胆な構想からでした。
彼が強調した富士通のパーパス――「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくこと」は、イベント全体を通して深く響いていました。

当初はAIと量子コンピューティングに特化した研究拠点として、3年で50名規模を目標に設立されたFRIPLですが、期待を大きく上回り、現在では400名規模の拠点に成長。その背景には、インドの高い人材力と、この地を戦略拠点として位置づける富士通のグローバルなイノベーション戦略があります。
特にインド工科大学(IIT)やインド理科大学院(IISc)といった名門校から90名もの優秀な新卒が加わり、国内外の大手IT企業からも経験豊富なメンバーが集結しています。

豊田は当時を振り返り、「最大の課題であり、成功の鍵は優秀な人材を惹きつけられるかどうかでした。幸い、それを実現できました」と語ります。こうした採用の成功をきっかけに、FRIPLは当初のAIや量子分野の研究にとどまらず、データ・セキュリティ研究、FUJITSU-MONAKAプロセッサの開発、ネットワークやサーバーソフトウェア開発、コンポーザブルインフラ研究などへと領域を拡大。
いまでは、幅広い技術を有する“富士通全体を照らす灯台”のような存在になっています。

Scientific AI Revolution:科学を生み出すAIへ

イベントのハイライトのひとつとなったのが、インド理科大学院(Indian Institute of Science)のSashikumaar Ganesan教授による基調講演でした。Zenteiq AI Tech Innovations社の創業者でありChief AI Officerとしても活躍するGanesan教授は、Scientific Machine Learningの分野で豊富な経験を持ち、AIがどのように科学計算やエンジニアリングの世界を変革しているのかを語りました。

現在のAIの限界にも鋭く切り込み、「いまの大規模言語モデル(LLM)は言語処理には非常に優れていますが、科学的な推論となると……“まだそこまでは至っていない”のが現実です。」と指摘。“科学を語るAI”ではなく、“科学を生み出すAI”への進化こそが次のフロンティアであるというビジョンを提示しました。

講演では、従来の科学計算が抱える根本的な課題にも触れられ、複雑なシミュレーションでは「数時間から数日、時には1か月」も計算に時間を要する現状を挙げながら、従来のシミュレーションソフトウェアからScientific Machine Learning、さらにScientific Foundation Modelsへの進化の流れを解説。Industry 4.0や5.0時代に求められる“リアルタイムの科学的推論”の重要性を強調しました。

そして最後にGanesan教授は、科学の進歩を通じて持続可能な未来を切り拓くためには、テクノロジーによる共創とイノベーションの力が欠かせないと訴えました。

多彩な分野での富士通の技術革新

本イベントでは、FRIPLが富士通の戦略的重点分野においてどのような技術貢献をしているかを、多彩なプレゼンテーションを通して紹介しました。Surya Josyula(技術戦略本部本部長代理)は、富士通のテクノロジービジョンと共創戦略を紹介し、グローバルなITサービスのリーダーとして、AIをコンピューティング、ネットワーク、データ・セキュリティ、コンバージング技術と統合し、外部パートナーとの協働を通じて、ビジネスインパクトと社会的価値の創出を加速している点を強調しました。

Mahesh Chandran, Ph.D.(Head of the AI Lab, FRIPL)は、Fujitsu Kozuchi AIプラットフォームを通じて、AIの進化を大規模言語モデルから高度なマルチエージェントシステムまで紹介しました。このプラットフォームは、エンタープライズ生成AI、ナレッジグラフ拡張RAG、モデル圧縮、特化型AI蒸留、ニューラルシンボリック推論、企業データ向けナレッジグラフなどが含まれており、エージェンティックメモリ、因果推論、AutoML、AIの安全性を確保するガードレールに重点を置いています。

Priyanka Sharma, Ph.D.(Director of Software Engineering, FRIPL)は、次世代ARMベースプロセッサー技術(2nm 3DICアーキテクチャ、機密計算対応)を用いたFUJITSU-MONAKAが、AIの利用機会を広げる役割を果たしていることを示しました。このプロセッサは省電力設計で、AIの計算需要と持続可能性への要求との間で生じる課題に対応しています。これにより、組織は高度なAIアプリケーションを導入しながら、環境への配慮も両立できるようになっています。

Krishnakumar Sabapathy, Ph.D.(Head of the Quantum Unit, FRIPL)は、量子コンピューティング戦略について説明し、ハードウェア・ソフトウェアの最新技術、量子と従来計算を組み合わせたハイブリッドプラットフォーム、そして国内外の主要研究機関との連携などの取り組みを伝えました。ロードマップでは、64量子ビットから256量子ビット、さらに1000量子ビット規模のシステムへと段階的に拡張し、材料科学、創薬、金融などの分野での活用を目指しています。さらに、富士通はデルフト工科大学との協力のもと、スケーラブルなダイヤモンドスピンモジュール技術の開発も進めています。

ネットワーク技術については、竹田和正(Head of Network System R&D)とSaurabh Chattopadhyay(Head of NSIBU Business Unit)が、5G/6G、フォトニクス、ソフトウェア開発などを含む富士通のグローバルネットワークR&Dの取り組みを紹介。Virtuora Network Softwareプラットフォームは、高度なオーケストレーション、分析、AIによる自動化、インシデント管理を実現し、AI Opsポートフォリオは統合AI/MLパイプライン、予測インテリジェンス、ネットワーク管理用の会話型AIアシスタントを備えています。

Binoy Samuel Thomas(Head of Advanced Composable Infrastructure R&D Unit)は、Composable Disaggregated Infrastructure(CDI)を紹介。AIやビッグデータ向けに柔軟かつ持続可能なサーバーアーキテクチャを提供し、従来のデータセンターで課題となる電力、コスト、性能の問題を解決。さらに、動的なリソース配分と利用効率の向上を通じて、持続可能性の目標達成を支援する革新的なアプローチであることを説明しました。

Innovation Showcase:未来を体感する技術

イベントでは、現実世界の課題に挑む9つの最先端技術を、参加者が実際に体験できるショーケースも設けられました。

AI computing broker(ACB)は、コードの変更なしでAIワークロード向けにGPUを効率的に共有できる仕組みを披露。
デジタルツインは、スマートシティや公共サービスへの応用例を示し、LLM脆弱性スキャナー&ガードレールはAIエージェント向けのセキュリティガイドラインを提示しました。Genomic AIは、高度な変異検出を通じて精密医療の可能性を見せ、Fujitsu Kozuchi Agentic AIは自律型AIの実践例を体験できるデモを提供。Quantum + AIによる分子エネルギープロファイリングでは、化学や材料科学での応用が具体的に示され、AI-Powered Network Operationsでは、自動化によるネットワーク管理と回復力の向上を紹介しました。さらに、Co-Drafter AIは規制産業向けのコンプライアンス自動化を、FUJITSU-MONAKA Surrogate AIは研究開発向け高速・省エネシミュレーションを実演。これらのデモは、AIや量子コンピューティング、ネットワーク、デジタルインフラなど、さまざまな技術が現場でどのように活用され、課題解決に結びつくかを実感できる内容となりました。

インド発イノベーション:共創が生む次の一手

Amitkumar Shrivastav(Global Fujitsu Distinguished Engineer)がモデレーターを務めたパネルディスカッションには、インドのAIエコシステムを代表するリーダーたちが集まりました。パネリストには、Abhishek Upperwal(Soket AI)、Ashish Kulkarni (Krutrim)、Ramprakash Ramamoorthy(Zoho Corporation)、松本安英(富士通株式会社)などが含まれ、技術人材の豊富さ、市場の多様性、起業家精神というインドならではの組み合わせが、国内外の市場でブレイクスルーに繋がるイノベーションの機会をどう生み出しているかが語られました。パネリストたちは、進化し続けるイノベーション環境や、共創による技術インキュベーションの可能性について見解を共有。スタートアップ、大手企業、研究機関のパートナーシップが、互いに価値を生み出しながら技術の発展を加速させ、インドがグローバルなイノベーションハブとしての役割を担っていることが見えてきました。

地域の力で生まれるグローバルイノベーション

Fujitsu Tech Open House India 2025では、グローバルな技術力とインドの優秀な人材ネットワークが出会うことで、イノベーションの可能性が大きく広がる様子が紹介されました。こうした取り組みは、国内の課題解決に貢献すると同時に、世界に通用する技術開発にもつながっています。FRIPLがわずか数年で400名規模の拠点へ成長したことは、現地での戦略的な人材投資が具体的な成果として表れることを示しています。

またイベントを通して、インド工科大学(IIT)やインド理科大学院(IISc)のような学術機関との連携や、Soket AI、Zoho、Krutrimといった企業との協業の可能性を探る取組に至るまで、スタートアップや大手企業、研究機関が互いに学び合い、価値を生み出す仕組みが明らかになりました。こうした取り組みを通して、FRIPLとしても多様な視点を取り入れながら、新しい課題に挑戦し続けてまいります。

インドでは初開催となったFujitsu Tech Open Houseでは、ゲストやパートナー、スピーカーの皆さまとともに知見を共有しながら、節目となるイベントを開催することができました。イベント全体を振り返り、協働によるイノベーションの力や持続可能な未来の実現に向けた取り組みの価値もあらためて浮き彫りになりました。今回の経験を通して、協働の重要性や技術を通じたイノベーションの推進、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの意義がより一層明確になったことも踏まえ、今後もFRIPLの研究活動を介して、インドでの取り組みとグローバルネットワークをつなぎ、国内外に新たな価値を届けていきます。

FRIPLに関する情報、協業の機会については、ウェブサイトをご覧ください。また、富士通の研究開発のWebページやSNSでも、最新の研究成果やパートナーシップに関する情報を随時発信していますので、ぜひご確認ください。

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