プロフィール
長坂 侑亮 / Nagasaka Yusuke
コンピューティング研究所
大学院 情報理工学院卒
2019年入社
私のパーパス:「積み上げた先にイノベーションを」
趣味はランニング、読書と料理をすることです。
2023年12月25日 掲載
計算時間を1秒でも短くしていくチューニングに楽しさを覚えた
大学で情報系を専攻し、大学院ではハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の研究室で、
行列計算の性能を最適化する研究に取り組みました。新しいアルゴリズムを考えたり、ソフトウェアのチューニングを行ったり試行錯誤を繰り返して、計算速度を向上させることに夢中になりました。1時間かかっていた計算が10分でできるようになるなど、結果が目に見える形で現れることに、感動や楽しさを感じました。自分の力で結果を出すことができた経験が自信に繋がり、研究者の道に進もうと思ったきっかけとなりました。そして、HPCの研究を続けたいと考え、その分野の研究開発に力を入れている富士通を志望して入社しました。
創薬技術の共同研究に挑戦
入社後はソフトウェアの高速化に取り組んできましたが、2022年からは、創薬の共同研究プロジェクトに参加しています。最初の頃は、化学や生物に関する知識が不足していたため、共同研究先の先生方の話を理解することが難しく苦労しました。しかし、関係者との会話や学習を通じて知識を吸収し、課題や技術の検討が徐々にできるようになりました。新薬の開発は5年から10年といった単位の時間がかかります。コンピューティングを活用することで新薬の開発効率を飛躍的に向上できると考えています。コンピューティング技術とAIを組み合わせることで、より高速な創薬に役立つシミュレーション技術を開発することを目指しています。理化学研究所との共同研究では、「富岳」を活用し、中分子薬や高分子薬を視野に入れた新しいIT創薬プロセスの構築を進めています(*1)。これを広く製薬会社などに普及させることで、新薬開発に必要な期間や費用を劇的に削減することを目指します。
未来を切り開くための技術の組み合わせ
気象予報では、過去の気象データや気圧の変化、雨雲の動きなどの情報を取集し、それらを活用してシミュレーションも行い、気象を予測しようとしています。気象予測のような複雑な計算問題においては、計算リソースの強化だけでなく、シミュレーション技術の進歩も重要となります。一方で、最近はChatGPTに代表されるようにAIの応用が急速に進んでいます。しかし、ディープラーニングなど機械学習によるAIモデルの開発やリアルタイムデータの処理には、コンピューティング技術の活用が欠かせず、膨大な計算を行うための計算リソースの強化が必要です。社会課題解決のためには、コンピューティング技術が重要になると思いますが、個々の技術だけではなく、複数の技術を組み合わせて、総合的に解決方針を考える必要があります。
試行錯誤からイノベーションにつなげる
私が目指す研究開発は、海のようなものを想像しています。まずは、特定の研究領域を深く追究することが研究においては重要だと思います。コンピューティング領域における行列計算の高速化やプログラムのチューニングに関連する専門知識はさらに深めていきたいと考えています。ただ、応用範囲が広がるにつれ、他の領域の知識も必要であると強く考えさせられるようになりました。知識の幅を少しずつでも広げる努力をしています。
研究員として大切にしたい研究へのアプローチ方法は、試行錯誤です。プログラムの実装や評価など、できることは試し、その都度検討し進展させることが大切だと感じます。良い結果が得られずに苦しいときもありますが、挑戦する気持ちを忘れずにいれば、自分が積み上げてきた経験が、新たな洞察やイノベーションへの可能性へつながると信じています。深い専門知識と広い視野を兼ね備え、研究を通じて技術を革新していきたいと考えています。
編集後記
編集担当:コミュニケーション戦略統括部 白 湘一
彼は、大学時代にプログラム高速化の研究開発に没頭する中で得た喜びについて語ってくれた。現在は仕事が多忙で、管理業務に多くの時間を割いているが、余裕のある時には、初心に立ち返り、プログラミングで手を動かしたいとのコメントを寄せてくれた。その深い専門性への探求心は大きな励みとなり、心に響いた。
本稿中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものです